ヤングケアラー小説

文字数 874文字

 ボクは眠たい目をこすりながら午後の授業を受けている。夏が近づいている。まだセミは鳴いていないけれども、そのうちにミンミンと聴こえそうな外の暑さ。

 ボクは中田けい。どこにでも居そうな中学二年生ということにしておこう。

 クラスメイトの立花れいかが早退すると先生に言った。

 そう言えば、立花れいかはよく学校を早退する。仲が良いから知っているけれども、立花れいかは母子家庭らしい。小一の弟たくと、の面倒を見る、いわゆるヤングケアラーらしい。

 この日は何故かボクも早退する。

 校門に立花れいかがスマホで誰かと話している。ボクは話し終えたのを確認してから立花れいかに声をかける。

 立花れいかは驚いた表情でボクを見る。ボクは立花れいかに一緒について行くことにする。立花れいかはイヤそうな何というか、何とも言えない表情をしている。

 ボクと立花れいかは小学校前に到着する。それまでは、ほぼ無言だったボクたち。すると、先生らしき人と、たくとが現れた。立花れいかは先生らしき人に謝ってから、弟たくとと手を繋いで歩く。ボクも置いていかれないようについて行く。

 たくとが立花れいかに抱っこ、そう言った。たくとは甘えん坊だけど、全然ボクには懐かない。

 立花れいかは弟たくとをおんぶする。ボクはついて行く。どうやらスーパーに買い物なのか、立花れいかは弟と手を繋ぎ直して入る。ボクも続いてスーパーに。冷房が気持ちいい。

 買い物を終えた立花れいかに弟たくとがまた抱っこ、そうぐずった。立花れいかは困った表情をしている。ボクは立花れいかに買い物袋を持つと言った。立花れいかは笑顔でありがとう、とボクに感謝した。

 たくとはあっという間に立花れいかにおんぶしてもらってスヤスヤと眠る。ボクと立花れいかは顔を見合わせてクスクス笑う。

 夏休み、どうするの?

 ボクは何となく立花れいかに聞いた。立花れいかは弟たくとの面倒を見ると言った。

 ボクも手伝うよ。

 え? そんな……悪いよ。

 いーから、いーから。

 ボクと立花れいかは笑顔で帰宅の道に。たくとはまだ立花れいかの背中でスヤスヤと眠る。

終わり
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