プロット

【起】
中一の皐月宵子《さつきしょうこ》は、親切で努力家だけど気の弱い委員長。面倒な委員の仕事にも、クラスの女王様・小町が、「ハープのレッスンが忙しいの。よい子の委員長さんにお任せするわ」と押し付けてくる掃除当番にも健気に取り組む。
誰かがきっと、頑張っているわたしを見てくれているはず。そんな言葉で自分を奮い立たせているせいか、なんだか最近、妙に視線を感じる。
街のボランティア活動の日、宵子は決死の覚悟で小町グループに注意する。詰め寄る取り巻きと宵子の間に、見知らぬ女子が割って入った。眼鏡を掛けた地味な女子は、おどおどした態度で仲裁を始める。取り巻きが馬鹿にして彼女の肩を突き飛ばした途端、眼鏡女子は不敵に笑い、取り巻きの鼻先寸前に拳を突きつけ、小町グループを撃退した。
「ずっとあんたを見てたぜ。よい子ちゃん」
そう言う眼鏡女子の背後から、スマホを持った和風イケメン男子が現れる。スマホケースのデザインに見覚えがあると思えば、それは小町の取り巻きのスマホだった。彼は宵子の手を取ると、
「大切な話がある。一緒に来てほしい」
と告げて歩き出した。

【承】
連れてこられた場所には、さらにひと組の少年少女がいた。互いにあだ名で呼び合う四人は、宵子のこれまでの善行をすべて把握していた。感動する宵子だが、彼らの正体はなんと悪事の天才集団。
忍の血を引くリーダーのリイチは、どんな物でも易々と盗み出すプロの泥棒。
洋館に住むお嬢様ニニーは、まるでピアノを弾くようにパソコンを操る腕利きのクラッカー。
一見地味なサンダユウは、喧嘩が生き甲斐の最強不良娘。
温厚な美男子で唯一の高校生シージャは、すべての女性を愛する天性のプレイボーイ。
リイチは小町の取り巻きのスマホから先程のやりとりが映った動画を消すと、
「盗みはこれで最後。俺たちは今までの悪行を悔い改め、今後は真っ当に生きていく。だから良い人間になるための指導をしてくれ」
と頼む。宵子は悩むが、彼らが更生しようと決意した理由に胸を打たれたことで引き受ける。
後日、まずは小さな人助けから始めてもらうつもりで四人を連れて街へ繰り出すが、かつてサンダユウに敗北した不良たちが連合を組んで襲ってきたり、シージャに助けてもらうために女子たちがわざと騒ぎを起こし始めたりと散々な目に遭う。さらに学校では、
「これ見よがしに目障りなのよ。偽善者」と小町に罵られ、宵子は堪えきれず涙を流す。それを知って激怒した四人は、
「自分たちのやり方で宵子を助ける」と立ち上がる。

【転】
リイチが中心となって考えた「小町ぶっ潰し計画」は、それぞれの得意な悪事を生かしたとんでもないものだった。
頭では止めるべきだと分かっているのに、心の中にいるもうひとりの自分が「良い気味、やっちゃえ」と彼らを煽る。
宵子はずっと良い子の頑張り屋だと思っていた自分にも、邪悪で残酷な一面があると気付かされる。ニニーが敵陣視察として小町の家に設置された監視カメラをクラッキングすると、レッスン室でハープの先生に厳しく叱責されている小町の姿がパソコンのモニターに映った。
先生が席を外しても、唇を噛み締めながら独りでひたむきに練習に打ち込む小町。レッスンが忙しいというのは事実だった。宵子は四人に、
「この計画を実行する前に、やりたいことがあるんです。協力してください」と頭を下げる。

【結】
学校にて。授業が終わり、いつものように掃除を押し付けようとやってくる小町グループの足音が聞こえると、宵子は話しかけられる前にくるりと振り向き、サンダユウとの猛特訓で習得した睨みで彼女たちを怯ませる。そのまま小町の目前まで歩み寄り、「きっと誰かが見ていてくれてるよ」と囁いて、シージャに教えてもらった「強気な女の子を落とす微笑み」を見せる。
そして唖然とする小町の手からほうきを奪い、自ら掃除を始めた。
四人はニニーの洋館に集まり、リイチがあらかじめ教室に忍び込んで設置していた小型カメラで一部始終を見ていた。彼らは、勇気を出して弱い自分を変えようとした宵子の姿に心を動かされ、彼女に倣い、新しい自分になるために行動することを心に誓う。
ニニー(二藤くらら)はホワイトハッカー、サンダユウ(三和田優)はニニーの用心棒、シージャ(四島大和)はバーチャルYouTuberになるという目標を立てる。
リイチは、「とりあえずちゃんと学校に通いたい」と話す。「ずっと見守ってるよ、頑張って！」と応援する宵子。そしてしばらく経ったある日、宵子のクラスに和風イケメン男子・服部一朗太《はっとりいちろうた》が転校してくるのだった。