見つめているのは……

文字数 1,096文字

(まただ……)
 私は髪の毛を洗う手を止め、顔から泡を洗い流すとお風呂場を見回した。
(やっぱり特に何も変わったところはないし、誰かがいるわけじゃない……)
(最近ずっとそう。お風呂場を使っていると誰かに見られているような感じがするのよね……)
(お父さんとお母さんに聞いてみても、そんなことないって言われちゃうし……やっぱり気にしすぎなのかな)
(……早く洗って出ちゃおう。お風呂入ってるけど、今日はもういいや。早く出たい)
 急いで髪の毛や身体を洗い、私はさっさとお風呂場をあとにした。
 次の日。
おはよう。って、どうしたの? なんか疲れてる?
あ、おはよー。んー……それがさ、最近お風呂場にいると誰かに見られてる感じでさ。しかもお父さんもお母さんもそんなことないって言うし……
お母さんにはホラー映画でも観たんでしょって笑われちゃったんだけど、こっちは笑い事じゃないよ……
そっかぁ……
周りを見たりとかはしてみたの?
もちろん! でも、なーんもなし。いつも使ってる、いつもどおりのお風呂場。シャンプーの位置とかタオルの位置だって変化なし!
んー……上って見てみた?
上? ううん、そういえば見てない
お兄ちゃんから聞いたことがあるんだ。どこからともなく視線を感じるときって横とかじゃなくて、上から見られてるんだって……。だから視線に気がついても見つけることができないって……
お兄さんって、あのよく友達とバカっぽいことしては注目集めてる? っと、ごめん。言い方が失礼だった
ふふ、ううん、大丈夫だよ。本当にその通りだから
でも、そんなお兄ちゃんがさ、友達と心霊スポット行ってからそう言ってたんだ。そのあとしばらくはちょっと静かだったし、上をにらんでたりすることがたまにあったから……
そっか。じゃあ今夜お風呂入ったときにでも上見てみるかな。ストーカーが覗いていたのが発覚! とかかもしれないし? たしかそんな小説があったような気がするしさ
んー……お兄ちゃんは気がついても知らん振りしたほうがいいって言ってたけど……
でも、なんかあったら通報とかしたいし、携帯をちゃんとお風呂場からすぐ手が届く範囲に置いてから入るから大丈夫だよ
ありがとね! なんか視線の正体がわかるかもって思ったら、ちょっとだけすっきりした
ううん。でも危険なことはしないでね?
大丈夫、大丈夫♪ あ、もう先生きちゃうね
う、うん……
 その日の夜。
(今夜こそ、視線の正体を突き止める……!)
(頭洗ってたらさっそく視線が……泡を落として……準備OK)
(いち、にいの、さん)
 ばっと顔をあげると、私のものではない濡れた長い髪が私の頬にくっついた……。
見つけてくれた……
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主人公

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