第1話

文字数 1,378文字

 おめでたい名前の友人がいる。
 どれくらいおめでたいのかと言うと おみくじの吉の中で一番良いとされる吉と同じなのだ。友達としていてくれるだけで 今後、おみくじを引かなくても良いな、と思えるくらい有難い存在だ。そう言いながらも 毎年、初詣の際にはおみくじを引いているから おそらく今、僕は口から出まかせを言ったのだと思う。

 おみくじといえば 今年も混雑を避けて初詣に出かけた。やはりコロナ禍ということもあって例年に比べて参拝客は少ないような気がした。僕がご挨拶に伺う神社は 接触を避けるためにスマホを使ったおみくじを採用していた。QRコードを読み込み、画面をタッチして 現れた番号を巫女に伝えてお金を支払う。なんとも近代的なやり方に様変わりだ。その内、お賽銭の事を課金とか、投げ銭とか呼ぶ時代が来るのかもしれない。

 一年で最初の運試しとも言える おみくじで今まで幸運にも凶に巡り会ったことがない。噂では 凶は存在しないとか言われているけれど 二年連続で凶を引いた友人がいたので雪男よりもその存在は確かだと言える。その友人は 凶自体、全体的に枚数が少なくて逆に引き当てる方が幸運だろう、と強がりにも聞こえることを話していたが 三年目に大吉を引き当てて 吉だった僕にドヤ顔を向けてきたので本人的に気にしていたのは間違いない。けれど、お笑いにうるさい関西人的には三年連続、凶を引かず大吉を引いてしまった事がもう凶なのではないのか、と、思ったのだが そこで敢えて水を差すことは大人げないのでやめておいた。けれど敢えてここでは言及しておく。“お笑い的にはあかんねんで”
 
 おみくじもそうなのだけれど 割と占いも好きな方だ。ただ好きとは言っても お抱えの占い師がいて その人に何をするにも相談しているとか、占い師のもとに頻繁に通っているとかそういうのではなくて 雑誌の後ろの方のページにある占いコーナーを読みますよ、的な好きである。朝の情報番組とかでも今日の占いとかランキング形式に発表されることがあるけれど ランキング形式にする必要ってあるのかといつも不思議に思っているのは僕だけではないはずだ。

 雑誌の占いコーナーを読むくらいとか言いながら 占い師に鑑定してもらったことがある。おめでたい名前の友人ともう一人の友人と三人で占ってもらった。僕は勝手に占い師のいる場所は薄暗いテントとか、薄暗い部屋みたいなものを想像していたのだけれど その占い師は割と広い階段の踊り場にいた。ただ雰囲気を作るためなのか薄暗かったことだけは想像通りだった。彼は手相と生年月日、あとオラクルカードというカードで占いをしてくれた。良い事もそうだけれど悪いこともきちんと言ってくれるその占い師は僕の中では好印象だった。一緒に行った友人たちの占い結果は個人情報なのでここでは触れないけれど彼が指摘してくれた事は どれも唸らされるものばかりだった。ちなみに僕は毎日を遠足みたいに楽しめる人間らしい。確かに当たっている、と思った。けれど一つだけ言わせてもらうのなら 僕は遠足よりも その何日か前に遠足に持っていくお菓子を買いにいくイベントのほうが大好きだった。

 とりあえず毎日が遠足みたいな人間なので 明日から毎日、駄菓子を三百円分、買おうかなって思う。また口から出まかせを言ってしまったみたいです。
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