第3話 授業が始まって

文字数 744文字

 キーンコーンカーンコーン。

 チャイムが鳴って先生が教室に入ってきた。
 今日の最初の授業は古文。
 真雪は沈んだ気持ちのまま、教科書とノートを鞄から取り出した。

「えー、まずはいつものように黒板に書いた文章をノートに写してください」

 先生が黒板に文章を書き始めると、クラス全員が黙って自分のノートに板書し始める。
 教室内は先生が書いているチョークの音だけが響いていた。

 そんなとき、

 ♪~♪~♪♪!

 真雪の鞄の中から突然大きな音がした。
 静かな教室内とは場違いな、誰かが踊り出しそうな軽快な曲だった。

 えっ、ちょっと! わっ! なにこれ、もしかして私の携帯から!?

 真雪は慌てて鞄に手を突っ込んで、携帯を探す。
 先生は生徒のほうを振り向き、きょろきょろと教室内を見回し始めた。

「誰だ? 授業が始まったら、携帯は音がならないようにしておけよ」

 先生が注意した頃には、真雪は音を消すことに成功していた。

「……それにしても、なつかしい曲だったな。ずいぶん昔の話だが、さっき流れた曲がすごく流行ってな。それで先生も」

 先生は授業を中断して、当時のことを思い出して話し始めた。
 どきどきしていた真雪は、誰の携帯だったのか追求されなかったのでほっとした。

 携帯のマナーモードのやり方がわからないんだもん。
 それにしても、いつの間にこんな着メロになってたんだろう。
 最初から? じゃないよね……もしかしてママが!?

 昨日ガラケーを受け取る前に、真雪の母が曲をセットしていたに違いない。

 はあ。
 また音が鳴ったらどうしよう。
 なんとかならないかな。

 真雪は鞄の中を覗き込みながら、ガラケーを操作してみる。
 だが、どうやったら音がならなくなるのかわからなかった。

 その様子を、友だちの明夏はしっかりと見ていた。
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登場人物紹介

真雪(まゆき)


ずっとスマホがほしいと思っている高校一年生

このたび、携帯電話を買ってもらえることになったが……

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