サビ猫と夕暮れ

文字数 327文字

黒に少しの茶色が混じった
その猫が来た日
夕暮れの赤いひびきが
窓ガラスをノックした

娘はまだ帰ってこない
ぼくはどうにも落ち着かず
無精ひげを触りながら
彼女の母親を探す目つきに

カラスを見る
襲われていたそうだ
真夜中の公園は
親子のふるさとだったのだろうか

日本では雑巾猫とも呼ばれているが
光の具合で
べっこうのように美しく光るときがあ
 った

その鳴き声は
海を連想させた
透明な
真夏の鈴のような

ぼくは今日という日が
いつだって当たり前だとは
どうしても信じられないときがあって
そんなときはよく長風呂をして

少しだけ現実を誤魔化している
彼女はよく鳴いた
それはぼくの爪の一部となって
未来に小さな傷を残す

母親は夕暮れに負けたのかもしれない
とびらを開けると
いまも燃えている
あの真っ赤な空の下で
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