至福のひととき

文字数 1,413文字

エモノは突然やってくるものよ。

/ トントン ガラガラガラ

保健室の戸が開いた。
また、子供達がどこか痛めて私に助けを求めに来たわ。

「失礼します」

声が耳に入りドキリとした。
この声。この声の持ち主を待ってたのよ。

…ずっと。

この高校で校医として務めていて、何人もの子供達にシて貰ってたのよ。
でも、私を満足させる子に未だ出会った事がなかった。

だけど、私は出会ってしまった。この声の持ち主がこの学校に入学した時、一目で分かったのよ。
この子なら私の求める事をシてくれる…と。
この子がココに来るのを待っていたのよ。なかなか来てくれないから、その間、他の子で代用してきてたけど。

大慌てで、壁の鏡を覗き込み、髪の毛を直す。
変なトコは無いわね。

「どうぞ。どうしたのかな?」

男の子が入ってくる。

「足滑らせちゃって。少し痛みがくるんです。診て貰えますか?」
「座って」
「はい」

私のほうがドキドキしちゃってるわ。私の前に座っているのを見て嬉しいのよ。ここに入ってきたら最後よ。私は君の事を逃がさない。私のお願いを聞いてくれるまでは、この部屋から一歩も外には出さないわよ。

「足首見せて」
「はい」

ソックスを脱ぐ。その仕草がズキンとくるのよ。その動作が私の欲望を駆り立てるのよ。
高校生の子供相手にこんな事を思ってるのをPTAが知ったら大変な事になるのかしら。

でも、私にとっては早急に必要な事なのよ。

「どうすると痛むのかな。ちょっと動かすから痛かったら言ってね」
「はい」

ゆっくり足首に触れる。爪先を動かす。足首を軽く揺らす。

「痛っ!」
「ここね。捻っちゃったのね。じゃぁ、湿布を貼りましょうね」
「はい」

患者の君は私の言うがまま。私の言う事は絶対な今の関係。
足首に湿布を貼って固定する。

「今日は安静にね。と言っても歩かなきゃならないけどね。無理はしちゃダメよ」
「ありがとうございます。じゃ戻りますね」
「ちょっと待って」
「はい?」

立ち上がろうとするのを留める。私は逃がしはしないのよ。折角飛び込んできてくれた私のエモノ。

「今戻っても部活は出来ないでしょ」
「まぁ、そうですけど」
「じゃぁ、ちょっと私のお願いを聞いて欲しいんだけど」
「えっ?」

驚いてる顔も可愛いわ。でも、さっさとスませたいの。他の子じゃダメだったのよ。ほんの少ししかもたなかった。体が君を欲してるのよ。もうかなり限界になってるのよ。逃がさない様に、思わず君の手握ってる。

「お願い…ね」
「な、何を?」
「大丈夫。簡単なことだから」

クルリと椅子を回して、真っ赤になってる君に背中を向ける。
私はゆっくり、背中に垂れている髪の毛をヒトツに纏めてピンで上に留めた。
背中で君が息を呑んでる気がするわ。

「先生…」
「いいのよ。後ろに立って」
「…は、はい」

椅子から立ち上がり、私の背後に近づく。

「ここをこうね」
「あ、分かりました」

何をすればいいか悟った手が、私の肩にかかる。ゆっくり動いていく。

あ…。これよこれ。私の想像通り。私の欲しい所に指が触れていく。
…気持ちいい。
君のテクニックなら、暫くは私の体が持ちそうだわ。
短い時間だけど、至福のひとときよ。

・・・

「うん。高峯君、コリが取れたわ。どうもありがとう。さすが、ボルダリングやってるだけあるわね。先生、ずっと肩こりが酷くてね。整体の予約前に痛んじゃうと辛いのよ。また頼んでいいかしら?」

「はい。いつでも」



- F I N -


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