序章

文字数 695文字

彼女の家は普通じゃない。
"普通じゃない"と言えば、良く思うも悪く思うも読者の勝手だ。
だがもうハッキリと言ってしまおう。
異常、なのだ彼女の家は。
父は一介のサラリーマン。
母はパートをしながら家事をこなし、長女は県立高校に通う二年生。
次女と長男はまだ可愛い小学生だ。
これだけ聞いて異常だなんて思う人がいれば、その人が異常だ。
しかしこれはこの一家の表の顔。
家族しか知り得ない裏の顔があるのだ。
父は酒癖が悪く酔っぱらうと手を上げ始める。
これもたちが悪く、長女にのみだ。
もう簡潔に言ってしまおう、母はサイコパスだ。
次女は先日、医者に軽いうつ病だと診断された。
長男はというと、図工の授業で"さつじんじけん"という作品を作ってきた。
小学三年生が、だ。
もう病んでいるとしか思えない。
そしてこの小説で最も肝心な長女だが…。
彼女は死にたがりだ。
しかも、困ったことに"死"に対して恐怖心が全くない。
横断歩道を渡ってて、脇から車がすごい勢いで曲がろうとしたとする。
当然のことながら車側も急ブレーキをかけるわけだ。
それがわかっていても、普通の人ならヒヤッとするだろう。
だが彼女は何も思わない。
いや、何も思わなければまだよかったのかもしれない。
彼女の場合、なんでちゃんと突っ込まないんだ、とドライバーに舌打ちする始末である。
きっかけさえあれば、彼女は何の迷いもなく死を選ぶだろう。

さて、少ししゃべりすぎたかな。
ここから先はその長女にバトンタッチをして、日々の不満やらなんやらをぶちまけてもらうとしよう。
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