ネコちゃん!

文字数 1,000文字

 暇だ。あまりにも暇だ。無職はやることがない。暇を持て余しすぎて、ついよくはないとは思いつつ、SNSを見てしまう。――見ていたら、おすすめの欄にチョコレート会社のクイズが出ていた。

「なになに? 若社長からの挑戦状……」

 私はここの会社の若社長を知らないので、チョコレートだけにちょこっと調べてみたのだが、猫の写真のつぶやきしか出てこない。それか、子ども受けのいいゲームのお知らせ。自分たちの動画の告知。
 はぁ……こんなもんで濡れ手に粟できる時代なのかねぇ。くっだらね。
 とりあえず、挑戦状というくらいなら解いてみるか。制限時間は15分ってことで、目覚まし時計のタイマーをセットしてから取り掛かることにした。

「よーい、スタート」
 小声で、自分に合図をする。うーん、どれどれ?
 イラストには、『この中に隠れている単語は何か?』というものだった。うーん、ぱっと見、会社のロゴにチョコの箱、そして封書の文字ってところか。
 ヒントなしで思いついた単語は、調べたら他社のアイス製品だった。違うみたいだな。悔しいが、ヒントを見ることにしようとしたのだが……ヒントのページから得るものは何もなかった。単なるアクセス稼ぎだったのだろうか? まあいい。いくつか他人の解答を見てみる。
 多くは同じ解答を導き出していたが、このような『お遊びの問題』は『一般人が解ける内容を出すわけがない』のである。ということで、多分この大勢は『間違っている』。
 よく見ると、会社のロゴ、チョコの箱、封書の文字以外にも、隠れているものがある。……桜の花びら。これが隠れヒントだ。

 そこから導き出した答えは、見事当該会社の他社製品にも結び付く。これは正解なんじゃないか? 正解発表は夕方らしいので、どうなるかわからないけども。
 仕方ない。暇だから昼寝でもするか。さてさて、結果はどうなることやら。また、目覚まし時計をセットする。
 
 あ、そういえば。

『ここの会社のキャッチフレーズ考えたの、私なんだっけ?』

 ――結局私は昼寝したあとにクイズの存在自体を忘れてしまい、そのまま朝を迎えた。目覚まし時計は壁にめり込んでいた。ああ、寝過ごしたけど、あのクイズの解答は一体何だったのだろうか? 

 ま、いいか。人生どうでもいいことを気にしていたら、甘い甘い時間は楽しめないのだよ。チョコレートだけに、ね。
 私はあの若社長の猫のように、布団の上で伸びをした。
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