第8話 洋介、最後の戦い

文字数 574文字



 デザートのデリバリーなんてあったか? いや、あったといても、さっきの注文で俺の財布に不安がある。コンビニまで往復したら30分はかかるだろうし。

 デザートといえば、定番はフルーツ、アイス、ケーキ、それとドリンクぐらいなものか。

 一人暮らしの男の冷蔵を開けるが、思ったとおりロクな備蓄がない。

 中身は実家から送られた根菜類(じゃがいも、里芋、赤カブ)、期限切れの近い豆腐と納豆ぐらいだ。

 もはやこれでデザートを作るしかない!

 じゃがいもの皮を向き、なるべく白い部分を選んで、食べやすいサイズにカット。そいつらに赤カブの皮を貼り付けた。どうか、ウサギのリンゴに見えてくれ。

 里芋も皮を向いて丸くツルツルにして、氷の欠片をあしらう。なかなかのアイスクリームじゃないか。

 絹ごし豆腐はウスターソースで徹底的にコーティングする。どこからみても、チョコレートケーキの完成だ。

 里芋の残りを摩り下ろしてコップに注ぐ。そこに軽く混ぜた納豆を沈ませてストローを刺す。頼むから、ヨーグルト入りタピオカドリンクと信じてくれ。

「『びゅっふぇ』のデザートは豪華だねえ」

 両親は俺の『作品』に疑いを持たなかった。デザートを口にする都度、俺の表情が苦しげに歪んだが、ツッコミはなかった。

「じゃあそろそろ、私たちは引き上げますかねえ。あとはお若い2人でうまくおやんなさい」

「は?」
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