第1話

文字数 1,552文字

うみのそこにすむにんぎょたちは、うたをうたうのがだいすき。
 にんぎょのララもうたをうたうのがだいすきです。
 ララがなかよしのともだちたちとうたをうたっていると、にんぎょのせんせいがきていいました。
「うたってばかりいてはいけません。にんぎょはうたうのもしごとですが、にんぎょのもうひとつのしごと、うみのそこのそうじもしなくては」
「はーい」
 みんなこえをそろえていいました。
 そして、うみのそこのそうじをはじめました。

 けれど、せんせいがいなくなると、みんなはすぐにそうじをやめてしまいました。
 にんぎょたちは、うたうしごとはすきなのですが、うみのそこのそうじのしごとはきらいなのです。
ララのともだちたちも、まだ、うみのそこのあちこちにごみがあるのに、そうじはさぼって、うたをうたいはじめます。
 ララはひとりでうみのそこのそうじをしています。
「ララ、ララもそうじなんてやめて、いっしょにうたいましょうよ。せんせいはもういっちゃったし、だれもみてないわよ」
 ともだちのにんぎょがいいました。
 でも、ララはくびをよこにふりました。
「だれもみてなくても、わたしはじぶんがただしいとおもうことをしたいの。せんせいのいうとおり、うみのそこのそうじはわたしたちにんぎょのしごとだとおもうわ」
 ララはいいました。
「つまんないこというのね」
 ララのともだちはあきれて、どこかへいってしまいました。

 うみのそこは、さいきん、すごくよごれています。
 にんげんたちが、ポイポイごみをうみにすてていくのです。
 ララがいっしょうけんめいごみをひろってそうじをしても、なかなかきれいになりません。
 とおくで、なかまたちが、たのしそうにうたうこえがきこえてきます。
 ララがうらやましくおもっていると、たいがやってきていいました。
「あら、おそうじしてくれてるのね。わたしたちのむなびれじゃ、ろくにごみはひろえないからねえ。ありがたいわ」
 たいはそういうと、それでもちいさなごみをくちでひろい、ララをてつだってくれました。
 ララとたいがそうじをしていると、
「なにやってるの?」
と、ちいさなさかなのむれがやってきました。
「うみのそこのおそうじよ」
 ララがいうと、
「ありがとう、ありがとう」
ちいさなさかなのむれはララのまわりをおよぎまわります。
「ふふふ、くすぐったい」
 ララはおもわずわらいました。
 そのうつくしいわらいごえにさそわれて、こんどはたこがやってきました。
「にんぎょのしごと、そうじちゅう、か」
 たこははっぽんのあしをクネクネさせながらいいました。そして、
「わしもてつだうぞ」
というと、はっぽんあしをつかって、そうじをてつだってくれました。
 はっぽんもあしがあるので、たこはごみをひろうのがとてもはやいのです。
 たちまち、うみのそこはきれいになりました。
「まあ、ありがとう。おかげであっというまにおわったわ」
 ララがうれしそうにいいました。
 すると、にんぎょのせんせいがやってきていいました。
「ララ、ちゃんとそうじをしてくれたおかげで、りっぱなステージができたわね」
 よくみれば、そこには、おおきくてきれいないわもあるし、りっぱなかいそうもゆらめいていて、うたをうたうステージにぴったりです。
「わたしたちはおきゃくさんね」
 たいがいって、
「おきゃくさん、おきゃくさん」
と、ちいさなさかなのむれがいいました。
 パチパチパチパチ。
 たこがはっぽんのあしではくしゅをします。
「わたし、うたうわ!」
 ララはそういうと、うつくしいこえでうたいはじめました。
 そして、うたいながら、
(だれもみてなくても、わたしはじぶんがただしいとおもうことをして、ほんとうによかったわ)
とおもいました。
 ララのうつくしいうたごえはひろいうみにひびきわたりました。
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