第1話

文字数 941文字

隣り合わせでお互いに背を合わせ寂しい寂しいと言って滑稽である。

スーパーの駐車場の奥でそう思いながらクルマのシートと背中合わせ。いや、シートは背中じゃないのだろう。シートは僕と同じ前方を向いているだろう。

いや、シートが背中かどうかそれより、シートと背中合わせで運転をしているとの自覚は大事だ。

駐車場の奥は駐車場の背中なのかそれより、駐車場と背中合わせで奥に居るとの自覚を大事にしているのだ。

運転をしているときシートと背中合わせであれば、シートに背後を頼んでいるのだから運転する僕は前方に集中できる。

いや、嘘だった。シートなんかに後方任せられるかってんだ。

で、スーパーに入った。けどすぐにスーパーを出る。カゴだカゴを忘れてしまった。

クルマに戻ってスタート。家に引き返す。スーパー所有のカゴ恐ろしい。スーパーが用意したカゴったら恐ろしい。

カゴはやっぱりマイカゴでしょ。しまった。マイカゴは常に使い捨てだった。家に引き返したところでマイカゴはない。毎回僕はマイカゴを作ってスーパーに持参して買い物をしていた。

マイカゴは竹を使用する。よっしゃと竹林へむかう。

竹林 竹林 竹林

竹林 竹林 竹林

と竹林にむかう。

ちくりん ちくりん

と竹林にむかっていたら

ちくわ ちくわと

竹輪屋に着いた。

「大将、ちくわやってのは
豆腐屋?蒲鉾屋?」

「こんちくしょう竹輪屋は竹輪屋だってんでぇへんちくりん。ちくわいっときの恥ってんで」

「大将、竹林知らんかね」

「みょうちくりんなこと尋ねなさるお方だ。竹林ならあさっての方だぜい」

ってんで、あさっての方へ行きます。

あさっての方へと。けれど早、
夕暮れとなりにけり。あさっての方はどこだろう。と新しい道路に入った。まだ開通していない。けれど僕はいつだって開通していない新しい道路にはいることができた。

入り口は狭いけれどいつだって僕に入り口は用意される。なぜだろう。たぶん僕はできの悪いシステムに収まらない人々を忘れないからだろう。

できの悪いシステムをとっくの昔に旅立った人々をいつだって覚えているからだろう。

それでいながらできの悪いくだらない下品なシステムを旅する無数の僕自身さえ忘れないからだろう。

前方に巨大な寄宿舎。あかり灯して聳える。

カーラジオからやさしく大きなラブソング。







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