第1話

文字数 1,382文字

「あんた、なんか女っぽいアクセサリーつけてるね」
母親にそう言われた。それもそのはず、俺がつけているネックレスは元々は女性ものなのだ。俺は達也、高校生二年生だ。今、
俺は美穂という女の子と付き合っている。せっかく付き合っているのだからということで二人で撮った写真を待ち受けにしたり、
ペアのものを身に着けたりしている。二人で撮ったプリクラなんかを財布に貼ったりもして仲良く過ごしている、と言った感じだ。
母親に指摘されたネックレスについては、本当であれば男女で異なるデザインのものを選ぶつもりだった。だが高校生にとって
ネックレスを買うのは安くはなく、といってあまりに適当なものはつけたくないと思ったので選んだのが今のネックレスだ。
そのことを母親に突っ込まれるとやはり恥ずかしくなってくる。ここで彼女のことを母親に明かせば母親は別に反対はしてこない
だろうが、と言って言うのは恥ずかしい。ではどうするか。現状を乗り切るために嘘をつくことはできる。だが今後も他に
ペアのアクセサリーを買ったりもする可能性は出てくる。何より、スマホの待ち受けを見られたらその時点でおしまいだ。そんな
ことを恥ずかしがっているのならいっそやめれば、と思うのだが彼女はそれを許してくれるだろうか。そもそも、それを俺は
望んでいるのだろうか。そう思い、彼女に「ネックレスのこと、親に突っ込まれたんだけど」と相談をしてみた。すると彼女からは
「別にたまたま選んだとか言えばいいんじゃないの?高校生にもなって親の言う通りのファッションをする必要はないし」と返って
きた。彼女の言うことは間違ってはいない。だが俺の気持ちも理解はしてほしい。そう思い「これ以上突っ込まれたら美穂のことを
親に話さなきゃいけなくなるかも」と言った。すると美穂は「じゃ、今度挨拶でも行こうか?」と言ってきた。そういうことじゃ
ないんだけどな、と思いながらもその日は話を終えて、自分の中でもう一度考えてみた。冷静に考えてみて思ったのは「別に何も
変える必要はない」だった。そもそも、ネックレスで彼女の存在がばれたわけではない。それに万が一彼女のことがばれたとしても
恥ずかしいのは俺だけだ。彼女は俺の親に挨拶に行こうかと言っているくらいなのだから恥ずかしくはないのだろう。となると
変な小細工をする必要はない。と言って親に嘘をつく必要もない。何も言わなければいいのだ。今後何かのことでまた言われたと
しても「そうだね」と言って流せばいい。万が一待ち受けを見られて彼女の存在がバレたなら、その時に話をすればいいのだ。そう
考えると気持ちは楽になり、翌日彼女と会っているときにそのことを話してみた。すると彼女は「それでいいんじゃないの?でも
私と付き合ってることが恥ずかしいの?」と聞いてきたので俺は「恥ずかしいよ」と答えた。すると彼女は「それはなんで?」と
不満そうに聞いてきた。なので俺は「大してかっこよくもない俺にこんなに可愛い彼女がいるだなんてランクが違いすぎるなんて
思われるからだよ」と言った。それを聞いた彼女は「私にとっては達也は最高にかっこいい彼氏なんだよ。そんなことで恥ずかしい
とか言うならやっぱりお母さんに挨拶に行こうかな」と言ってきた。なので俺は「それは、結婚の挨拶まで取っておこうぜ」と言った。
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