虐待疑惑

文字数 546文字

「ええ、最初に……どこが、どうかは巧く言えませんが……その親子連れを変に思ったんです。そして、良く観察してみると……常連客では有りませんでした。子供は痩せていて……お菓子をねだっても買ってもらえず……そこで確信したんです……。この子供は親に虐待されている、と」
 児童虐待を通報したスーパーの店員は、そう語った。
 保護された子供は、同年齢の平均よりも5㎏以上痩せていた。
 両親は刑事告訴され、裁判で彼等に有利な判決が出るか、子供が成人するまで面会は禁止される事になった。
 両親は、ともに、この市が誘致に成功したIT企業の社員で、つい最近、この市内に引っ越して来ており、何故、前の住所で子供への虐待が判明しなかったのかは調査中である。

「大変だったね。これからは、好きなだけ食べていいんだよ」
「う……うん……」
 児童養護施設の職員は、保護された子供を食堂に案内した。
 そこには……子供が好みそうなメニューが取り揃えられていた……。
 他の丸々と太った子供達は……美味そうに食事をとっていた。
 なお、この市と、その周辺は……ここ一世代近くに渡って「食の砂漠(フードデザート)」と化し、生鮮食料品、特に生野菜の入手が困難になっており、十五歳未満で糖尿病を発症している子供の割合は、この国でも上位5位に入る高さとなっている。
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