第1話

文字数 998文字

晴れの日より曇りの日が、曇りの日よりも雪の日が、雪の日と雨の日は同じくらい好きだが34年間住んでいたのが関西で、今年から東京。残念ながら雪を見る機会はほとんどないので、より身近な雨の日が一番好きだ。
雨の日は風景の色が一番きれいに見えると思う。晴れの日のような強い影のコントラストがないから、ものの色の細かいところまでよく見える。
影の色が穏やかで、景色の色が美しいのは曇りでも同じだが、雨の日は雨粒が光を含んで景色の上を走り、世界全体が宝石箱になったかのようにきらきらさせてくれるので雨の日に軍配が上がるのだ。
荷物が濡れるのはちょっと大変だけど、強くなったり弱くなったり、ある時は大粒ある時は霧雨。雨の無限の表情をずっと見ていられる。
また、雨の音を聞いているととても安心する。
逆に快晴や晴れはちょっと苦手だ。お洗濯日和ではあるけれど。なんだかいろいろ、押し付けられているように感じるのだ。快晴を人に例えるといわゆるオラオラ系、ウェイ系と呼ばれる人のようだ。どこでも大勢で騒ぎ仲間内でしか通用しない独特のファッションで、自分たちと違う人種を攻撃する。晴れは優秀でいつもポジティブだけどそれだけの人、という感じ。言ってることは正しいけれど世の中には理想の通りできない人もいる、ということがわからない人。
曇りや雨、雪の日は大人という感じがする。誰にでも一旦は穏やかに話してくれそう。不愛想でも時には暗く思い悩んでいても受け入れてくれる。特に雨は、小さい声で泣いていたとしてもなかったことにしてくれる。どんな気分の人でも雨の下では雨音に囲まれて水をかぶるのだから、少々何をしていたって構わない。
雨の日は、8畳一間のアパートの出窓を少しだけ開けて、雨と一緒にお茶会をする。
夏でも温かいアップルティーがおいしい。
また、長靴はいて、傘を持ってお散歩。コンビニやなんかで売っている透明のビニール傘が、傘ごしの雨も楽しめて一番好きだが、雨が作る青い風景に似合う素敵な傘を探してもいい。自分だけではなく周りの人も雨の日は見ていてより面白く、素敵になる。小さい子が着るてるてる坊主のようなレインコートが可愛らしい。スーツ姿のおじさんがカバンを頭の上に乗せて走ってきて、マンガを一コマ切り取って再現しているようだ。
今は5月だから、雨の日は少ない。6月になり梅雨がちゃんとやってきてくれることを今からとても心待ちにしている。
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