4月は恋の季節

文字数 977文字

 私、あなたの事が好きなのーー
 
 四月は恋の季節、というのは本当らしい。
 俺は、人生初の告白を見知らぬ女の子にされている。
 彼女はプリキュアの10倍くらいの可愛さを持ち合わせていた。
 良いよ!と、返事をしようとしたとき、

 
 
 スピ…スピピピピ…
 鳥の鳴き声がうるさくて、俺は目を覚ました。その十秒後に俺の鼻息だと気づく。起き上がって、ティッシュをつまみ出す。
 どうやら、告白は夢の中での出来事だったようだ。悔しい気持ちを、抱えリビングへ向かった。
 食卓で俺を待っていたのは、トーストとスクランブルエッグの、ザ・朝食の面々。
 朝食作りを終えた母親は、椅子に座ってコーヒーを飲み一息ついていた。そして、ボーっと突っ立ってる俺に、怪訝そうな目を向けて言った。
 「ほら武、顔を洗ってきなさいよ」
 漫才研究部、ツッコミ役の俺は、心の中で「俺は、小学生か!」とタイミングよくお見舞いしながら、のそのそ歩き出した。
 「あれ、母さんタオルは?」
 「横の棚だよ!お前は、小学生なのかい!いつになったら、場所を覚えられるようになるのさ。」
 遺伝には抗えないだと感じた。

 いつもどおり、時間がないので、朝食を物理的に流し込み家を出た。
 古くとも新しくとも言えない校舎は、市の外れにひっそりと建っている。
 友達と合流して、雪崩のようにクラスに入った。席に着いて、ワイワイ話をしていると、夢の中で見た女の子が、教室の前に佇んでいた。
 俺は躊躇なく、近づいて話しかけた。
 「どした?何しに来たの?」
 彼女の驚いた顔は、プリキュアの100倍も可愛かった。しかし、プリキュアの10倍の顔に戻って言った。
 「あなたではなくて、あなたの友達に用があるんです…」
 自称優しい俺は、指名された奴を呼んであげた。二人で廊下を歩いていくのを送りだす、振りをした。
 なんとなく今朝の夢が気がかりで、二人の後をついていった。


 「私、あなたの事が好きなの。」
 夢でのあの言葉が聞えた。

 えっと…夢は正夢になったらしい。しかし、ちょっと違う形で。なぜだか、俺の友達が告白されている。
「そういうことかよ」
 ようやく合点がいった。
 フッと軽く息をはいて、清々しい空を見上げ来た道を戻る。
「告白か…されたいな…」
 俺の独り言は虚しく消える。
 四月は恋の季節。そして、桜の季節。
 空には、ヒラヒラと桜が舞っている。
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