第1話

文字数 2,000文字

はい、ちゅうもーく!今日の文芸部の活動はこれ、【会話に地の文を入れてみよう】でーす!
ちゅうもーくって部員ウチら二人だけじゃん。てかいきなり意味わかんないんだけど。
チッチッチッ、もん子もまだまだね。そんなもん子に問題です。小説において何が一番大事でしょうか?
何がまだまだなのよ!まぁいいわ、うーん…そうね、個性的なキャラや奇抜な設定かしら。
フッフッフッ。これだからもん子は、まだアンダーヘアーも、ろくに生え揃ってないのよ。
な、何よ。アタシだって高二なんだからアンダーヘアーくらい生え揃ってるわよ!そういうムラ美こそ生え揃ってないんじゃないの?
ざんねーんでしたー。ほら見なさい。アンダーヘアーだけじゃなくワキ毛もビッシリよ!
いや…なんかゴメン…。ってかムラ美…あんたそのワキ毛…。
ん?あぁこれね。冬以外剃らないのよ。
違くて…なんでワキ毛を三つ編みしてるのよ!てか、冬以外剃れよ。
えっ!?ワキ毛って三つ編みするものじゃないの!?
はぁ…。どんな環境で育ったらワキ毛を三つ編みするJKが誕生するのよ。
てな訳だから今から会話に地の文を入れて過ごしてみるわよ。やり方としては会話の前半に地の文、後半にセリフでいくわよ。
どういう訳だよ。てか、ムラ美…問題の答えはどこいったのよ。
よぉーい、スターツッ!
有無を言わせないのね。
はい、もん子ダメー!だーかーらー地の文を入れなきゃ!

ちょ…うーんと、ムラ美の無茶苦茶な提案を渋々受け入れたアタシは、髪をかきあげながらムラ美に聞いた。

こんな感じでいいの?

窓から入ってくる桜の香りが鼻腔を刺激する。

そうそう。やれば出来るじゃない!そんな感じよ。

で、話変わるんだけど実はね、この前三年のアーノルド先輩に呼び出されたんだ…。

恋バナフラグにアタシの胸は高鳴った。

アーノルド先輩って、あの筋骨隆々イケメンのショワルツェネッガー?

人差し指を二回左右に振り、もん子に顔を近づける。

違う違う!ショワルツェネグァーよ!

口が臭い!と思ったアタシは、ムラ美に気付かれないようさりげなく距離をとり、振り返る。

発音はどうでもいいの!それでそれで?

自分の口臭が気になったアタシは、口呼吸からエラ呼吸に切り替えた。

体育館裏にある桜の木の下に行ったら、先輩が待ってて『ダイジなハナシがあるんだ』って言ってきたの。

胸熱展開にアタシの体は火照った。まるで映画のワンシーンみたい、と思うと火照りはさらに増し、人差し指で(にゅう)の首を擦りたい衝動にかられた。それを必死に堪えてムラ美に続きを促す。

キャー!そんなん絶対告白じゃん!で、先輩はなんて?

乳の首を擦りたい衝動を我慢しているもん子はとてもいじらしくて、可愛い。そんなことを考えていると自然と体は動いていた。自分の着ている白いブラウスの袖をハサミでジョキジョキと切り、両の脇を全開。桜とワキ毛、どちらも満開だった。

そうしたら先輩が『スキデス。ツキアッテください』って…。アタシもずっと先輩に憧れてたから『アタシで良かったらよろしくお願いします』って答えたの。

擦ってた…。擦っていたの気付いたら。火山の噴火のように、体の真ん中から何かが弾ける感覚。多分これが絶頂というやつなのかな。少しだけ大人になったアタシの鼻にはムラ美のワキガ臭とエラ臭が入ってきた。笑いながら嘔吐したのは初めてだった。

おめでとう!ホント良かったねムラ美!ってかあんまり惚気すぎたら怒るからねー。

嬉しそうなもん子。アタシの幸せを喜んでくれるもん子。だけど…それが辛かったの。真実を告げなければならないと思うと、胸が痛んだ。

えっと…ね、もん子。実はこの話には続きがあって。

カチカチと時計の音色だけが響く。

続き…って?

窓から見える景色は桜のピンクに空のアオ。だからかなぁ…少しだけ、ほんの少しだけ勇気が出てきた。

驚かないで聞いてね…。先輩さぁ、急に学ランとワイシャツを脱いだの。それで『コレみてくださーい』って言って両手を挙げたのよ…。そこには…グスングスン。三つ編みした…ワキ毛があったの…。

三つ編みかぁーい!おソロやんけぇー!あっ…地の文忘れた。
はい、もん子ペナチョ〜!(いち)ペナチョにつき一ヶ月間、アタシのワキ毛画像を待ち受けにしてもらいまーす!
いや、ペナチョルールとか最初に言えよ…。

じゃあ続き行くわよ。

どこまで話したか分からなくなったアタシは、とりあえず右鼻くそを左の鼻の穴に移植した。

当然断ったわ。だって先輩…右脇だけ三つ編みで、左脇はストパーかかってたんだもん!彼氏のワキ毛はノーマルが良いもん!

そう言ったムラ美の両脇からは、可愛らしい三つ編みヘアーが顔をひょっこり出していた。天使と見間違えてしまいそうなその姿は、窓の外に見える春の景色にとても映えていた。いや、とても生えていた。

どの脇で言ってんのよ!

「「プッ、あははっ!」」
あー笑った。というわけで今日の活動はここまで!
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

背景色
  • 生成り
  • 水色