第1話

文字数 1,818文字

ふたごのアイビーとローリエは、
てづくりのビスケットをうっています。
ビスケットをかう おきゃくさんは、
「きみたちのビスケットをたべると しあわせになれる。」
「ここのビスケットをたべると げんきになれる。」
と おもっていました。

ふたりはビスケットをつくるときに、
アイビーが
「しあわせになあれ」
といい、ローリエが
「げんきなあれ」
と きじに はなしかけながらつくっています。

あるひ ローリエが かぜをひいてしまい、
ビスケットはアイビーがひとりでつくることになりました。
いつもどおりアイビーが「しあわせになあれ」とはなしかけ、
ビスケットをつくりました。
それをたべたおきゃくさんは、しあわせなきもちになりました。
ところが、
「さいきん どうも ちょうしが わるい」
「からだが おもい」
と おもうようになりました。

そんななか、ローリエのかぜがなおり、
かわりにアイビーがねこんでしまいました。
こんどはビスケットをローリエがひとりでつくることになりました。
いつもどおりローリエが「げんきになあれ」とはなしかけ、
ビスケットをつくりました。
それをたべたおきゃくさんは、いつもげんきにすごせています。
ところが、
「さいきん どうも きぶんが おもい」
「おちこむようになった」
と おもうようになりました。

しばらくしてローリエのかぜがなおり、
いつものようにふたりでビスケットをつくって うるようになりました。
それをたべた おきゃくさんたちは、いつものように 
しあわせでげんきなにちじょうがもどってきたようにおもいました。
そしておもいます。
「アイビーとローリエのビスケットをたべなくては
 しあわせにも、げんきにもなることができない。」

あるばん、まちに つよい たいふうがおとずれ、
まちじゅうのひとびとのいえが こわれて
さまざまなものが とばされて しまいました。

アイビーとローリエのいえもこわれてしまいました。
やねがはんぶんとばされてなくなり、
ねている へやにも このはや、えだが はいってしまいました。
ビスケットをつくるへやも まどガラスがわれて
どろみずがはいってしまいました。
ビスケットをつくるどうぐが すべておちて こわれ、
ざいりょうも すべてかぜにとばされていってしまいました。

こわれたいえをなおしたり、よごれたへやをかたづけていた
アイビーとローリエは、
たかいところからおちてしまったり、
なおしているさいちゅうにけがをしてしまったりと、
なにもできなくなってしまいました。

おきゃくさんだったひとびとは、じぶんたちのこわれたいえをみて、
とばされて うしなったものを さがしながらおもいました。
「アイビーとローリエのビスケットをたべなくては
 しあわせにも、げんきにもなることができない。」
そしておもいます。
「アイビーとローリエは、
 しあわせに、げんきにすごせているだろうか。」

おきゃくさんが アイビーとローリエのいえをみにいくことにしました。

アイビーとローリエは、こわれたままのいえで、
ほとんどベッドやイスのうえで
すごしていることがわかりました。

おきゃくさんのひとりが、ふたごのむすめたちの
やねや、まどをなおしました。
そうすれば、ふたりが あんしんしてすごせるとおもったからです。

またべつのおきゃくさんたちが、ふたごのむすめたちのへやを
そうじしました。
そうすれば、ふたりが かいてきにすごせるとおもったからです。

またべつのおきゃくさんたちは、ふたごのむすめたちに
さいほうを おしえてやりました。
そうすれば、ふたりが なにもできない ひびをおくらなくてすむ
とおもったからです。

おきゃくさんたちはふたごのむすめたちに
「しあわせになあれ」
「げんきになあれ」
と いつも はなしかけました。

つきひがたち、ふたごのむすめたちのからだは
げんきにかいふくしました。
いまふたりは ふくをつくって うっています。

ふたりは ふくをしたてるときに、
ローリエが
「しあわせになあれ」
と いい、アイビーが
「げんきなあれ」
と きじに はなしかけながらつくっています。

そしてふたりがまちにパンをかいにいけば、
「しあわせになあれ」
と はなしかけられて つくられたパンをかいます。
ふたりが ぬのじをかいにいけば、
「げんきになあれ」
と はなしかけられて おられた ぬのじをかいます。

まちのひとびとは きょうも
「しあわせになあれ」
「げんきのなあれ」
と はなしかけて
しあわせに、げんきにすごしています。

(おわり)

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