俺に聞かないでくれ

文字数 405文字

「このペンギンはどこのだ?」

「そいつは南極。あ!上野!それはニューサン島の固有種!特別待遇者だ!」

 世界的能力者がまた馬鹿な事をしてくれた。「一羽〇〇円でペンギンを野和湖に移動させる」という企画をしたのだ。
 このご時世、奇抜な事をしなければ数字が取れないと、どいつもこいつもやり過ぎだ。世間も批判はすれど結局は「まだ誰も見た事のない凄いもの」を要求してくる。そのせいでこういった「迷惑行為と面白さ」の区別が曖昧になってきている。

 そしてその皺寄せが、何の落ち度もない疲弊した一般庶民に回ってきたりする。向こうはちょっとしたお遊びでも、こっちは生活が破綻しかねない。

 必死になってペンギンを各地に返送する。一日でも早く。安全に。クレームが来ないよう丁寧に。

「これ、残業代出るんスかね?」

「俺に聞かないでくれ……。」

 俺達は安全の為、念力でペンギンに触れずに梱包し、ベルトコンベアに乗せて移動能力部に流していった。
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