第2話 転生異変と私たち人間

文字数 892文字

「それじゃ……千鶴ちゃんは、夢の中で何度も同じ人と出逢ってるってこと?」
こくこく、と何も言わずに頷く。
ここは、駅近くのお洒落な花屋。
その名も、「ルッコラ」
私は、店長に夢の事で相談をしに来たのだ。
店長にとっても難しい質問なのだろう。
さっきっから溜め息か相づちか分からないほど唸っている。
んんんー、とまた背伸びをして、ハーブティーを口に含む。
このくだり、前に見た。
「それって……多分だけど、転生異変に巻き込まれてしまってるのかも」
転生……異変?
「なんですか?それ」
即、疑問にして返してしまう私が少し恥ずかしい。
「転生異変。簡単には、タイムスリップのようなものらしいけど。実際には違うらしくてね」

転生異変。誰もが巻き込まれるわけではない。
逆に言えば、巻き込まれる可能性の方が低いものらしい。
転生する際に、転生軸という、次元か時間の軸に歪みが生じ、その時に転生する人が巻き込まれ、更には、現世でその後遺症が残り、夢の中で現世から前世や来世に飛ぶ者がいる。
現段階で詳しい情報は、あまり多くはないらしいが……。

「夢の中の場景を思い浮かべてみてくれるかな?」
夢の中の場景……?
昨日は、よく覚えている。
「平安時代のような……隣に、いつもの彼が居て。その時彼は、守弥って名乗っていました」
ううん、違うかも。と、私は言い直す。
「正確には、私が彼をそう呼んでいたんです」
自分で言って、改めて違和感を思い出す。
夢の中で知らない人の名を呼ぶことなど出来ない。
誰でも、顔だけを把握することぐらいなら出来る。
「逢ったこともないのに、名前を知っていて、逢ったこともないのに顔を知っていて……正直、凄く、怖いんです……」
背中で冷や汗を掻いているのがよくわかる。
怖い。知らない人を懐かしいと思う事が。
分からない。どうしてこんなに、懐かしさに囚われるのか。
「千鶴ちゃん、ひょっとしてだけどさ」
「はい?」
「その守弥って人と、夢の中でも夢の中以外でも何回も逢ったことあるんじゃないかな?」

「そう、例えば……現世とか」

私の思考回路は、思わず停止した。
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