文字数 497文字

 頭の中は、遊ぶことや女のことでいっぱいだった。このままでは、すべきことができない――。

 俊三郎は1日に2時間、博物館の学芸員になるための学習をしたかった。しかし、雑念が湧き、学習スケジュールが混乱し、自分が今どうすべきか、何が間違っていて何が正しいのか、さっぱりわからなくなってしまうのだった。

 そして日々、生活のための仕事がある。フリーターだが、生活のためにはほぼ週5で8時間ほど、つまり正社員のように働かなければならない。学習の時間を取るために仕事をやめてフリーターになったのに、大きな変化といえば収入が減ったことくらいだった。仕事のプレッシャーは以前ほどではないが、収入が減ったことのストレスを考慮すると、むしろマイナスのようだった。

 日中の仕事が以前より緩いせいか、精神的にルーズになり、人生について真剣に向き合う気も減退してきた。生活はできているから、わざわざ学芸員になろうと苦労する必要性も感じられないし、仕事で疲れてもいる。

 こうして俊三郎は、惰性のまま生活のための仕事をし、そのために生きるようになり、理想を手放し、その時々の小さな快楽に溺れ、堕落していった。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み