納豆、話す。 

文字数 467文字

20XX年。世界は混沌の中にあった。第三次世界大戦が勃発したのである。
世界では発展に発展を遂げた最新の化学兵器により戦火の一途を辿っていた。
食料は尽き、人々から笑顔が消え、政治機関は崩壊しかけ。どうすることもできない現状に誰もがこの世の終わりを予期していた。

そんな中、兵庫県西宮市在住の36歳、かつてはサラリーマンをしていた男、田中は今夜3日ぶりの食事にありついた。
この日、田中は妻と娘を敵国の空撃によって失っていた。泣き崩れながら放浪した瓦礫だらけの街。
どんなに悲しくても体は正直。腹が減って今にも死にそうだった。
そんな田中にもほんの少しの運が降ってきた。いや、ほんの少しではない。この運命が世界を変えてしまうことになるのである。
歩き続けた街の崩壊したスーパーの中で納豆を見つけた。
田中は無我夢中で包装をとり、指で納豆をかき混ぜた。そして口に運ぼうとした瞬間、誰もいないはずのその場所で声が聞こえた。

「おい、人間。私の言うことを聞けばこの状況を一変させ、さらには貴様らの望みを叶えてやる。」

これが歴史上初めて納豆が喋った瞬間である。
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