第2話 黒の世界

文字数 2,989文字

世界はきっかけで変わるもの……
──∥黒の世界観∥──
この世は腐ってる・・・

この世界は腐ってる
犯罪すらも日常的になってしまった
誰もが偽善者を装っている
だから
俺が罪を犯しても誰も文句は言えないんだよ
俺の名前は松永太一。
今は23歳、フリーターだ。
……別に働きたくない訳じゃない。
いっつも就職するごとにゴタゴタ起こしてクビになるから、最近じゃバカバカしくなった。
でも俺がこうなっちまったのは、元はといえば両親が原因だ。
両親は俺に厳しかった。小学生の時には友達と遊んだこともないし、中学生の時には成績が悪かったら飯さえ食わせてくれなかった。
そして俺が高校2年生になったとき、両親は俺を殺そうとしてきた。
俺が『両親を殺す計画を立てていた』、と言ってきて……
それからの俺はおかしくなった。
なにが善意かすらもわからなくなった。
だから2年前、俺は両親を殺し、山に埋めた。
不思議と悪意は感じなかった。
感じたのは……爽快感だった。
とにかく俺は何でもした。
ただその時の『スリル』を味わいたくて……
強奪、殺人、恐喝、暴行、放火……
スリルさえあれば何でもよかった。
そのうちに、俺は海斗と知り合い、二人で犯罪を犯すようになった。
そんな事ばっかしてた時、俺は海斗からある相談を受けた。

「電車を乗っ取る?」

「そう、どう思う?太一」

「海斗、お前はホントにバカだよな。そんなの絶対楽しくないぜ!」

「まぁまぁ……たまにはいいじゃん♪俺に付き合っても。」

なんだその軽さは。

マジでコイツ、今すぐに殺してぇ。

「……殺すぞ」

思ったことがつい口にでてしまった。
これは俺の悪い癖だ。
その後の海斗は実にしつこかった。
結局俺も参加するはめになったが……
理由は報酬が奪った金全額だったからだ。
海斗にしては報酬をいらないなんて珍しい話だが、あいつの事情なんて正直どうでもいい。

「で、どの電車襲うんだよ。」

「田辺行き終電だ。あれなら人がすくねぇしな。」

「ちっ、めんどくせぇ。わかったよ。」

そして今、俺は田辺行き終電を待っている。

「友のため……か。」

友達を助けるのは……初めてかもしれない。
まぁ、今回は報酬全部くれるからなんだけど。

『まもなく電車がまいります。白線の内側でお待ちください。』

「やっと来たか。」

なぜか待っているのが長く感じた。
こんな性格だからなのだろう。
俺は電車に乗り込んだ。
ただそこに『スリル』があることを願って……
電車の中はやはり人が少なかった。
1車両目には二人、見た目はサラリーマンだな。
2車両目には一人、これは遠いから見えないが、おそらく学生だろう。
俺はとにかく1両車を乗っ取ればいい。

「なんてつまんない仕事だ。」

思わず呟いてしまった。
次の駅まであと3分を切っていた。
次の駅に差し掛かった。
その時、何か寒気を感じた。
…この電車の中で…

「…気のせいだ。」

自分に言い聞かせた。
次の駅に着いたため、電車は停車した。
男が一人乗り込む。
優しそうな顔立ち、身長は180センチもある。
海斗はこっちを向いてウインクした。
俺は返事がわりに睨んだ。
間もなく電車はトンネルに差し掛かる。
……さぁ、始めるとするか。
段々と、電車はトンネルに近づき……
……暗闇へと入っていった。

「両手を挙げて地面伏せやがれ!少しでも妙な行動とったら殺す!!早くしやがれ!!」

俺は慣れた手つきで拳銃を取り出し、一人のサラリーマンの額に突きつけた。

「動くなよ。お前と、そのもう一人の男の命は俺の手の中にあるんだからな!…床に伏せろ!!!」

最初に「フリーズ!!」っていってやったらよかった。カッコ良かったのに……

「助けてください!命だけは……」

「あーあー…うるっせぇな。お前らが何もしなかったらな。」

とにかく、早く運転席へ行くとするか。
ふと、二両車をみると、海斗がしつこくウインクしてきた。
いい加減うざいと思ったが、どうやら成功したようだ。
俺の足は運転席へと向かっていた。
しかし、車体は急に揺れだした。
俺はバランスを崩してイスにしがみつく。
電車は停車した。
それも、今は使われていない路線に移動していた……
俺の鼓動は速くなった。
…なぜバレているんだ…
俺は急いで運転席へ移動した。

「おい!運転手!てめぇ自分が何してるかわかってん・・・」

言葉を失った。
運転手が・・・いない・・
そしてその代わりに、俺の後頭部には銃口が突きつけられている。

「・・・どうして・・」

また思わず口に出た。

「どうして?・・じゃあ振り返ってこっち見てみろよ。」

聞き覚えのない声・・
俺はゆっくりと振り返った。
そこには拳銃を突きつけた少年・・2両車の学生。

「電車強盗ご苦労様。しかし私たち4人は・・警察ですので。」

・・4人??

「悪いな、太一。せめてなにも抵抗しないでくれよ。」

海斗・・!

「てめ・・サツだったのか・・」

「そうだ。俺は潜入官だったんだよ。お前の後ろにある組織、『key』を一網打尽にするためにな!」

・・はじめから騙されていた・・・

「そしてこの3人はFBI捜査官だ。『key』をずっとおっていた・・・・おっと、もう時間だ。さっさと銃を捨てて両手を挙げてくれよ。俺だってお前を殺したくないからな。」

もう・・・終わりか・・・
俺は銃を下に置いた・・

「いや・・銃をおろすのはあなただよ、海斗さん・・」

野太い声・・一瞬・・・目の前の光景が信じられなかった。
FBI捜査官のはずの3人が海斗一人に銃口を向けていた。

「え・・な・・は・・?」

明らかに動揺する海斗。

「海斗さん・・貴方に隠していることがあります。
まず、僕らはFBI捜査官ではありません。
と言うより、実は私たちは・・『key』の者です。残念ですが貴方には・・・死んでいただきます・・」

“パンパンパン!!!”

三人が一斉に撃った。
海斗は床に横たわって・・・死んだ。

「ふぅー・・さて、邪魔者は消えた。・・・太一さん?」

突然声をかけられ、俺は少し身震いがした。
目まぐるしい状況の変化に頭がついていけなかった。

「・・はい?」

「ご無事で何よりです。貴方の相棒が潜入官だったのを知ったときは、いてもたってもいなくなったんです。強攻策ですみません。」

「・・・いや、別にいい。」

いつもの強気な俺が戻りつつあった。

「では・・帰りましょう。」

3人の中の一人が言った。
今はものすごく機嫌がよかった。

「フフ・・・フフフフフ・・・ハハハハハハ!!!
ああ・・帰ろうか。。」

俺は出入り口の扉へと向かった。

“パン・・・・”

腹に激痛が走る・・・

「残念だが・・あなたにも死んでもらいます。潜入捜査官にも気づかないドジは組織にはいらないんで・・」

周りが暗くなっていく・・・意識が・・・・薄れ・・・て・・

「・・・こんな世の中に生まれた自分を呪うことだな・・」

男たちは電車から降りていった・・・

───この世は"偶然"というものは存在しない
全ては"必然"からなっているのである───
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