第5話  人殺しはさせません

文字数 690文字

 気が付けば草むらで仰向けになっていました。
 上体を起こして周囲を確認してみます。
 どこかの街の外れのようですが、知らない場所です。
 あれは夢だったのでしょうか?
 確かわたくしは、教会で炎に包まれたはず……。
 服がありません。生まれたままの姿です。
 寒い……。それに恥ずかしい……。
 とにかく、まずは着るものを探さなくては。
 立ち上ろうとしたところで、わたくしはハッと気が付きます。
 探さなくても、自分で作り出すことができるのでは?
 ものは試しです。
 つい先ほど神様からいただいた『なんでもできる力』を使ってみましょう。
 夢か現か、嘘か真か、これでわかります。
 わたくしは念じました。
 瞬間、わたくしは修道服を身に付けていました。ベールも靴もロザリオもあります。
 すべて、生前わたくしが身に付けていたものです。
 どうやら、この力は本物のようです。夢ではなかったようです。
 でも、これからどうしましょう?
 やるべきことが多すぎて考えがまとまりません。
 と、その時。
 見覚えのある男性が必死の形相で走る姿が目に入りました。
 自爆テロを計画したグループの一人です。
 見つかって追われているに違いありません。
 案の定、銃を持った軍人たちが同じ方角から走ってきました。
 走る速度がずいぶん違います。追われている方の男性は、ここへ至るまでに体力を使い果たしているようです。
 このままではすぐに追い付かれてしまいます。
 どちらに正義があるかなんてどうでもいい。
 わたくしの目の前で人殺しはさせません!
 わたくしは軍人たちの武器をすべて消しました。
 それから、軍人たちの記憶から男性を消しました。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み