東の魔王
文字数 712文字
サマルカンド
14世紀、ティムール帝国。
シャー・ルフは果樹園の木陰で本を読んでいた。目の前には整えられた水路がある。ここには草原の乾燥や砂漠の熱気と程遠い清浄な空気があった。
そこに、父のティムールが現れる。彼は白い杖をついていた。
ルフは顔を上げた。
フ、と彼は苦笑した。
ティムールはルフの隣に腰掛けた。この頃、体の節々が痛むらしい。
少し、沈黙が流れる。
ルフが口火を切った。
ティムールは笑った。
ミーラーン・シャーはティムールの三男で、一度反乱を起こしたことがあった。
長男と次男は既に亡く、次男の子ピール・ムハンマドが後継者に指名されている。
モスクからアザーンが流れる。
シャー・ルフは立ち上がって、その場を去った。
ティムールは座ったまま、息子の背中を見送った。
次回はミーラーン・シャーの狂気について。