文字数 991文字

最後の希望ね・・・

「もう少し期待させるようなこと言われれば
 頑張れるんだけどね」

「嫌よ。
 後々(のちのち)ストカーにでもなられたら厄介(やっかい)だもの」

「それ、わざわざ言う必要ある?」

僕はげんなりしテンションが落ちた声でぼやく。

「そうね。
 じゃあ私を守れたらパンツ見せてあげる。
 それともキスがいい?」

彼女の論理(ろんり)はどこまでも合理的で殺伐(さつばつ)としている。

契約(けいやく)としてのキスはするけど心はあげないと。

とは言え興奮(こうふん)してしまうのは、童貞(どうてい)の悲しい(さが)

「私としてはキスの方がおすすめかな。
 死んだらパンツは見えないけど、
 キスなら死んでもして貰えるものね。
 私が生き残っていればだけど」

死んでも守れと!?

(たし)かに童貞の僕がキスを出来るチャンスなんて、
これを逃せば一生ないかも知れないけど。

知れないけど・・・

「僕は死なないとキスも出来ないほど、
 下層階級なのか!?」

「あなたは人気アイドルじゃないもの。
 当然よ。
 それに死んだら、その事実は闇の中。
 無いのも同然。
 お(たが)いにとってWIN(ウイン)- WIN(ウイン)の契約じゃない」

彼女は言葉はどこまでも簡潔(かんけつ)で、
閑散(かんさん)として無機質(むきしつ)ではあるが、利己的(りこてき)ではない。

期待させるだけで何もさせない女子と比べれば、
契約としてでも義務をはたす姿勢は、
律儀(りちぎ)ですらある。

そこが彼女の魅力でもあるのだが。

「君は僕を利用して、
 気が(かたむ)きかけてるふりをして、
 利用だけしようとは考えなかったの?」

面倒(めんどう)なのよ。
 そう言ったでしょ。
 女子は複雑(ふくざつ)なのよ」

(たし)かに大多数の女子の心情は複雑だ。

だが彼女にかんして言えばそれは当てはまらない。

どこまでも合理的に見えて不合理だ。

そう言った意味では彼女の言葉は真実を言い当てているが、
真実を語ってもいない。

大多数の女子と言うカテゴリーは複雑だが、
彼女自身は複雑ではない。

どこまでも清廉潔白(せいれんけっぱく)

嘘は言わないが真実もまた言わない。


それが僕が(とら)えた彼女の輪郭(りんかく)だった。

 
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