第1話
文字数 1,999文字
"そろそろ光合成してえなあ"
寝る前にベットの上でSNSを見ていた夏希はあるツイートが目に留まった。
ツイートの主は部活の先輩 駿さん。
先日小テストのカンニングがバレて3日間の自宅謹慎となりちょっとした騒ぎを起こした人物だ。
偏差値70近い理系特進の人がどうして、と首を傾げていると同じクラスの先輩颯さんがテストの存在を忘れていて再テストになったら彼女との放課後デートに差し支えるからだったらしいと教えてくれた。
個人的にデートの為にカンニングして
謹慎を喰らう彼氏なんて
ごめんこうむるけどな。
気をまわす場所を間違えているあの人は意外と馬鹿なのかもしれない。
ってかデートの前に部活来いよ。
携帯2個持ちだと言っていたので今はもう1つのほうからツイートしているのか。
少し相手してやろう。
"外出れても光合成はできませんけどね笑"
リプを返して1分以内にまたリプが返ってきた。
本気で暇だなこの人。
苦笑しながら通知を開くと
予想外の内容に目を見張る。
"お前、人間光合成出来るって知らないの?"
え、出来るの?
ド文系すぎる夏希は自分の記憶に絶対の自信があるわけではないがたしか中学理科の光合成のページに人間の記述はなかったはずだ。記憶違いは恥ずかしいので
「人間 光合成」のワードをウェブ検索にかける。
開いたベストアンサーには
「人間は光合成しない」との文字が。
なんだ。やっぱりしないんじゃないか。
私はそのページのスクリーンショットを
リプ欄に貼り付けた。
真に受けて信じると思っているのかもしれないが
そうはいかんぞ。
理系分野はからっきしだが文明の力を味方につければ怖いものなどない。どんなもんだとにやけていると光合成したい先輩、駿さんではなく颯さんがリプ欄に名前を連ねた。
"夏希、中学理科ちゃんとやったか?ウェブ情報を鵜呑みにするな"
え、まじで?
お調子者カンニング駿さんと違い颯さんは
京大A判定の頭脳を持ち合わせる冷静沈着な方だ。こんなことで嘘をつくような人ではないからその方がこのリプということは、
"まじですか、光合成するんですか"
サイトが間違った情報をベストアンサーに指定する趣旨は理解しかねるが偏差値70が2人ともこう言っているのだ。
"お前よく分からんウェブと颯どっちが信憑性高い?"
駿さんの追い打ちが私の脳内で白旗挙手の決め手となった。
まじかあ…人間って光合成するんだ…
…いやでも教科書に人間が光合成するって書いてなかったし意外と知らないヤツもいるのでは。明日学校で皆に教えてやろう。人が知らないクイズの答えを知っているという優越感が脳内に溢れ始める。
ワクワクしながら明日の準備をしていると新たなリプが増えていた。ユーザーネームからするにこの前本入部した1年生だろうか。
"夏希さんマジすか"
…後輩との初絡みが光合成とは少し恥ずかしい。
折角新しい後輩が入ってきたのに威厳が保てなくなってしまう。
せめてもの強がりで
"ちょっと忘れてただけだから"
と返し携帯を閉じた。
翌日。登校するなり「人間は光合成するのかクイズ」を目に入ったクラスメイト片っ端から全員に出題するという行動に出た。これだけ聞けば誰か知らない奴に出くわすだろう。しかしそんな期待も片っ端からへし折られることになる。皆口をそろえて言うのだ。
「人間は光合成しないし、出来ないぞ」
脳内大パニックの嵐。
クラスメイト35人中35人が同じ答えを返した。
しかし昨日は理系クラスの先輩2人が言っていたし、
後輩もマジですか、と追随してきた。一体何がどうなっている。
混乱のまま部室に向かい着替えをすましたとこでしれっと謹慎を終えた駿さんと颯さんに遭遇した。
「んで、分かったの?ちゃんと」
「何がですか」
「…まさかとは思うけどお前」
「信じてないよな」
「だから何を!」
「人間が光合成するってことを!」
「しないの!?」
「あったりまえだお前の体ん中に葉緑体ねえだろうが!!」
「だって颯さんが鵜呑みにするなって言った!」
「鵜呑みにするなとは言ったけど光合成するとは言ってない」
「だって夏希さんマジですかってあいつが」
同タイミングでそばを通りかかった後輩を指さす。
「俺のは夏希さんマジで分かってないんすか、のマジすかです」
「ハメたな!?」
「そっちが勝手にハマったんでしょうが!俺はちょっと忘れてただけだから、のリプの方がビビりましたよ。なに知ったかしてミスってんすか」
恥だ。末代までの恥だ。お調子者に踊らされ普段冷静で冗談も言わない人に易々と丸め込まれ挙句の果てに後輩に言葉のあやでハメられた。穴があったら入りたい。
部活の馬鹿話で済めばいいがもうクラス中と光合成の話をして馬鹿がバレている。
その日から私の異名は人間光合成となり引退の色紙や卒アルのネタにまで引っ張られることになった。
皆の衆、覚えておくといい。世の中周りの人間よりもウェブの方が信じられるし、なんなら自分の直感が一番頼りになるものだ。
寝る前にベットの上でSNSを見ていた夏希はあるツイートが目に留まった。
ツイートの主は部活の先輩 駿さん。
先日小テストのカンニングがバレて3日間の自宅謹慎となりちょっとした騒ぎを起こした人物だ。
偏差値70近い理系特進の人がどうして、と首を傾げていると同じクラスの先輩颯さんがテストの存在を忘れていて再テストになったら彼女との放課後デートに差し支えるからだったらしいと教えてくれた。
個人的にデートの為にカンニングして
謹慎を喰らう彼氏なんて
ごめんこうむるけどな。
気をまわす場所を間違えているあの人は意外と馬鹿なのかもしれない。
ってかデートの前に部活来いよ。
携帯2個持ちだと言っていたので今はもう1つのほうからツイートしているのか。
少し相手してやろう。
"外出れても光合成はできませんけどね笑"
リプを返して1分以内にまたリプが返ってきた。
本気で暇だなこの人。
苦笑しながら通知を開くと
予想外の内容に目を見張る。
"お前、人間光合成出来るって知らないの?"
え、出来るの?
ド文系すぎる夏希は自分の記憶に絶対の自信があるわけではないがたしか中学理科の光合成のページに人間の記述はなかったはずだ。記憶違いは恥ずかしいので
「人間 光合成」のワードをウェブ検索にかける。
開いたベストアンサーには
「人間は光合成しない」との文字が。
なんだ。やっぱりしないんじゃないか。
私はそのページのスクリーンショットを
リプ欄に貼り付けた。
真に受けて信じると思っているのかもしれないが
そうはいかんぞ。
理系分野はからっきしだが文明の力を味方につければ怖いものなどない。どんなもんだとにやけていると光合成したい先輩、駿さんではなく颯さんがリプ欄に名前を連ねた。
"夏希、中学理科ちゃんとやったか?ウェブ情報を鵜呑みにするな"
え、まじで?
お調子者カンニング駿さんと違い颯さんは
京大A判定の頭脳を持ち合わせる冷静沈着な方だ。こんなことで嘘をつくような人ではないからその方がこのリプということは、
"まじですか、光合成するんですか"
サイトが間違った情報をベストアンサーに指定する趣旨は理解しかねるが偏差値70が2人ともこう言っているのだ。
"お前よく分からんウェブと颯どっちが信憑性高い?"
駿さんの追い打ちが私の脳内で白旗挙手の決め手となった。
まじかあ…人間って光合成するんだ…
…いやでも教科書に人間が光合成するって書いてなかったし意外と知らないヤツもいるのでは。明日学校で皆に教えてやろう。人が知らないクイズの答えを知っているという優越感が脳内に溢れ始める。
ワクワクしながら明日の準備をしていると新たなリプが増えていた。ユーザーネームからするにこの前本入部した1年生だろうか。
"夏希さんマジすか"
…後輩との初絡みが光合成とは少し恥ずかしい。
折角新しい後輩が入ってきたのに威厳が保てなくなってしまう。
せめてもの強がりで
"ちょっと忘れてただけだから"
と返し携帯を閉じた。
翌日。登校するなり「人間は光合成するのかクイズ」を目に入ったクラスメイト片っ端から全員に出題するという行動に出た。これだけ聞けば誰か知らない奴に出くわすだろう。しかしそんな期待も片っ端からへし折られることになる。皆口をそろえて言うのだ。
「人間は光合成しないし、出来ないぞ」
脳内大パニックの嵐。
クラスメイト35人中35人が同じ答えを返した。
しかし昨日は理系クラスの先輩2人が言っていたし、
後輩もマジですか、と追随してきた。一体何がどうなっている。
混乱のまま部室に向かい着替えをすましたとこでしれっと謹慎を終えた駿さんと颯さんに遭遇した。
「んで、分かったの?ちゃんと」
「何がですか」
「…まさかとは思うけどお前」
「信じてないよな」
「だから何を!」
「人間が光合成するってことを!」
「しないの!?」
「あったりまえだお前の体ん中に葉緑体ねえだろうが!!」
「だって颯さんが鵜呑みにするなって言った!」
「鵜呑みにするなとは言ったけど光合成するとは言ってない」
「だって夏希さんマジですかってあいつが」
同タイミングでそばを通りかかった後輩を指さす。
「俺のは夏希さんマジで分かってないんすか、のマジすかです」
「ハメたな!?」
「そっちが勝手にハマったんでしょうが!俺はちょっと忘れてただけだから、のリプの方がビビりましたよ。なに知ったかしてミスってんすか」
恥だ。末代までの恥だ。お調子者に踊らされ普段冷静で冗談も言わない人に易々と丸め込まれ挙句の果てに後輩に言葉のあやでハメられた。穴があったら入りたい。
部活の馬鹿話で済めばいいがもうクラス中と光合成の話をして馬鹿がバレている。
その日から私の異名は人間光合成となり引退の色紙や卒アルのネタにまで引っ張られることになった。
皆の衆、覚えておくといい。世の中周りの人間よりもウェブの方が信じられるし、なんなら自分の直感が一番頼りになるものだ。