牛丼屋で隣りに座った知らない人が奢ってくれた件

文字数 665文字

「お兄さん、おひとりですか?」
「・・・・」
「ああ、そうです。おにいさんに話しかけてます」
「ひとり、ですけど・・・」
「だいぶ涼しくなってきましたよね~」
「・・・・」
「知ってます?この店のバイト朝勤入ってる橋本さんって女子大生彼氏と別れたら・・・」
「あ、すみません・・・なんです?」
「・・・・?!」
「いや、なにか?」
「なにも・・・話しかけただけですよ」
「はあ・・・あっ、ここの店員さん?」
「いや、違いますよ。隣りに座ったのも必然だし、壺でも売りつけてやろうかなって思って」
「・・・・」
「なんつって」
「・・・・」
「あ、きましたね。つゆだくなんだ。紅ショウガとりましょうか?」
「大丈夫です」
「半熟卵派、そこは俺もわかる・・・あ、どうぞどうぞ。気になさらず、先に食べてください」
「・・・・」
「今日は俺の奢りなんで、もしよかったら追加でサラダもいっときます?」
「大丈夫です・・・自分で払います」
「俺のことはいいから熱いうちに食べなよ」
「・・・・。じっと見るのやめてもらっていいですか」
「あ、ごめんね。気になるタイプなんだ。はい、向こう見てる、食べて食べて」
「・・・・」
「みんななんで話しかけただけで怖がるんだろうなぁ・・・別になにも悪いことしてないのに」
「・・・・」
「さみしい人と思われるのも心外なんだよな。嫁も子どももいるし、二人とも元気だし、俺のこと好きだし」
「・・・・」
「こうやって知らない人に親切にして、それが巡り巡って自分に帰ってくるんだよな」
「・・・・」
「気にしないで・・・ひとりごとなんで」
「ちょっと黙ってもらっていいですか?」
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