第1話
文字数 1,082文字
今日はクリスマスイブ。
日本中、いや世界中の、彼を信じる全ての子供たちへ夢を届ける使命を架されたサンタさんにとって、プレッシャーの日でもある。
「サンタ殿!サンタどの!!・・・大変、大変でござるぅ!」
この小さなサンタ・ファンタジー界隈では、律儀で主君に忠実、そして和風イケメンで有名なトナカイの真多三郎(マタザブロウ)が、珍しく血相を変えて駆け込んできた。
「どうしたんだ、真多三郎。まあいい。
・・・まず、まずは落ち着こう!」
普段めったに動揺することのない彼の報告を早く聞きたい焦りを抑えながら、主であるサンタが落ち着き払って応えた。
「・・・」
だいぶ息が整ってきた真多三郎が言った。
「・・・今、全世界を牛耳るトレンディー財閥の、今年7歳になるたった一人の愛娘のご令嬢がこのクリスマスにサンタ殿へ所望する品物をご存じで?」
ああ、なんだそんなことかと、安心したサンタがその彼の言葉に返した。
「ああ、何を言い出すかと思ったら。あの親の恩恵を受けて、ぜいたくな暮らしに飽き飽きしてる少々変わり者のお嬢さん。
去年は確か、最初『白黒模様じゃない生まれた時からカラフルな生きているパンダ』と言いだしてどうなるかと思いきや、急にイブの前日になって『カラフルなパンダのぬいぐるみ』に変更してホッとしたな。そして案の定贈ったら大喜びしてた」
マタザブロウ、お前は心配しすぎだよ、所詮子供のほしいものさとサンタが笑ったが、彼の次の言葉に思わず息を呑んだ。
「・・・あの、今年の彼女の本命は、『チョコレートのような甘い音色で私のお気に入りの歌を歌い、毎朝私を心地よく目覚めさせてくれる生きている猫(お気に入りの目覚まし時計代わり)』にたった今変更したのでございます・・・。
そして、彼女いわく、『これ用意できないんだったら、サンタ、まずはダイエットしてその飛び出た腹を引っ込ませてから、全世界の子供たちの前で、セップクしてオワビなさい!』と・・・。
昔彼女のおとうさんがいると彼女に断言している、サンタはいるのか、いないのか。
今回、すれ違いが原因の両親のリコン話で子供心にも、少々大人びた彼女なりに心の拠り所を求めているみたいです。
・・・いかがなさいますか、サンタ殿」
「・・・」
少し考え、
ふと優しい表情に戻った、サンタが微笑んだ。
「贈ってあげようじゃないか。
今からさっそく用意しよう、真多三郎。
まずは彼女のおとうさん、おかあさんの、お互いや娘を思う、真心たちを呼んできてくれ。それに私が心の聖火をつける。
今年の、私からの最大級のお嬢さんへ贈るプレゼントにしよう。
これから忙しくなるぞ!」
完
日本中、いや世界中の、彼を信じる全ての子供たちへ夢を届ける使命を架されたサンタさんにとって、プレッシャーの日でもある。
「サンタ殿!サンタどの!!・・・大変、大変でござるぅ!」
この小さなサンタ・ファンタジー界隈では、律儀で主君に忠実、そして和風イケメンで有名なトナカイの真多三郎(マタザブロウ)が、珍しく血相を変えて駆け込んできた。
「どうしたんだ、真多三郎。まあいい。
・・・まず、まずは落ち着こう!」
普段めったに動揺することのない彼の報告を早く聞きたい焦りを抑えながら、主であるサンタが落ち着き払って応えた。
「・・・」
だいぶ息が整ってきた真多三郎が言った。
「・・・今、全世界を牛耳るトレンディー財閥の、今年7歳になるたった一人の愛娘のご令嬢がこのクリスマスにサンタ殿へ所望する品物をご存じで?」
ああ、なんだそんなことかと、安心したサンタがその彼の言葉に返した。
「ああ、何を言い出すかと思ったら。あの親の恩恵を受けて、ぜいたくな暮らしに飽き飽きしてる少々変わり者のお嬢さん。
去年は確か、最初『白黒模様じゃない生まれた時からカラフルな生きているパンダ』と言いだしてどうなるかと思いきや、急にイブの前日になって『カラフルなパンダのぬいぐるみ』に変更してホッとしたな。そして案の定贈ったら大喜びしてた」
マタザブロウ、お前は心配しすぎだよ、所詮子供のほしいものさとサンタが笑ったが、彼の次の言葉に思わず息を呑んだ。
「・・・あの、今年の彼女の本命は、『チョコレートのような甘い音色で私のお気に入りの歌を歌い、毎朝私を心地よく目覚めさせてくれる生きている猫(お気に入りの目覚まし時計代わり)』にたった今変更したのでございます・・・。
そして、彼女いわく、『これ用意できないんだったら、サンタ、まずはダイエットしてその飛び出た腹を引っ込ませてから、全世界の子供たちの前で、セップクしてオワビなさい!』と・・・。
昔彼女のおとうさんがいると彼女に断言している、サンタはいるのか、いないのか。
今回、すれ違いが原因の両親のリコン話で子供心にも、少々大人びた彼女なりに心の拠り所を求めているみたいです。
・・・いかがなさいますか、サンタ殿」
「・・・」
少し考え、
ふと優しい表情に戻った、サンタが微笑んだ。
「贈ってあげようじゃないか。
今からさっそく用意しよう、真多三郎。
まずは彼女のおとうさん、おかあさんの、お互いや娘を思う、真心たちを呼んできてくれ。それに私が心の聖火をつける。
今年の、私からの最大級のお嬢さんへ贈るプレゼントにしよう。
これから忙しくなるぞ!」
完