1. 魚
文字数 386文字
魚が好きだった。
とは言っても、水族館で見るような魚ではなく、寿司屋で見るような死んだ魚でもなく、デフォルメされた魚が好きだった。
丸と三角で書ける単純な形。
バツの目を書いていたけれど、バツの意味を知るようになってから、マルにした。
マルにしてる人が沢山いて嫌になったから、人の目をした魚を書くようになった。
自分だけの魚を作りたかったのだ。
人の目をした魚を書くようになった頃、私は咲くことを強要された。(他の人もそうだったけど)
常に泥酔しているような世界で、追加の酒が飲めるようになったって嬉しくない。
知識を得て、常識を身につけても、普通のレールから落っこちる。
私に翻弄された魚達も、きっとそう思っていたんだ。
あの虚ろな目の奥で。
今、私は咲けないけど、この身に溜まる拙さとやるせなさを受け入れられるようになりたい。
ただ、それだけを望んでいるんです。