第1話
文字数 456文字
どうしたの、
と彼は呟く。
繋いだ手の体温は青。けれど妙に湿っていて、やな感じ。
真昼間の午前二時。わたしは彼と遊園地で次に乗るアトラクションを探していた。
明るく派手な色をしているアトラクションはいつも陽気で、またそれはわたしの気持ちを圧迫する。どこにも乗りたくないけれど、そんな事は云えなかった。
心は灰色、曇りがつのる。
こうなると、わたしは自分の機嫌を舵取りできなくなってしまう。
体調悪いの、と聞く彼の口角もよく見るとひくついている。
わかんない。
たっぷり黙秘して、それでもその一言しか出てこなかった。
帰ろうか、と彼は言う。
そこでもわたしは何が最適解かわからずに、「うん」とだけ呟いた。
通りかかったおんなのこの、ボンドみたいにねちゃねちゃした嗤いごえが、どうにもじぶんの居たい空間にそぐわないように思った。
出口に向かって歩くにつれて、遊園地は色を失っていくようにみえた。パレードの音楽が耳に刺さる。
湿った手をそれでも握り締めながら、ふと賞味期限が迫っている冷凍サバのことを思い出して、今日は彼とサバを食べようと思った。
と彼は呟く。
繋いだ手の体温は青。けれど妙に湿っていて、やな感じ。
真昼間の午前二時。わたしは彼と遊園地で次に乗るアトラクションを探していた。
明るく派手な色をしているアトラクションはいつも陽気で、またそれはわたしの気持ちを圧迫する。どこにも乗りたくないけれど、そんな事は云えなかった。
心は灰色、曇りがつのる。
こうなると、わたしは自分の機嫌を舵取りできなくなってしまう。
体調悪いの、と聞く彼の口角もよく見るとひくついている。
わかんない。
たっぷり黙秘して、それでもその一言しか出てこなかった。
帰ろうか、と彼は言う。
そこでもわたしは何が最適解かわからずに、「うん」とだけ呟いた。
通りかかったおんなのこの、ボンドみたいにねちゃねちゃした嗤いごえが、どうにもじぶんの居たい空間にそぐわないように思った。
出口に向かって歩くにつれて、遊園地は色を失っていくようにみえた。パレードの音楽が耳に刺さる。
湿った手をそれでも握り締めながら、ふと賞味期限が迫っている冷凍サバのことを思い出して、今日は彼とサバを食べようと思った。