第1話

文字数 1,361文字

「さあ、さあ、げきがやってくるよ」
 げきだんいんが、むらでチラシをくばっています。
「みて、レナ」
 あとすこしで、ゆうめいなげきだんが、まちにやってくるようです。
「すてき。いっしょにみにいきたいね」
 リコちゃんは、めをかがやかせました。
「そうね、わたしもいきたい」レナはちいさくうなずきました。
 レナは、びょうきがちな、おばあさんとすんでいて、おかねもなかったので、いけそうにありません。
「こまったなぁ」
 げきをこうかいするひまで、あといつかです。じゅうようなやくのひとりが、れんしゅうちゅうにけがをして、でられなくなってしまいました。だんちょうは、こまっていました。
「ねぇ、ポロロン、もうすこししたら、このまちでげきをやるのよ。いけなくても、めをとじてそうぞうしてみるの。ほら」
 レナは、ことりのポロロンをやさしくなでました。
 ポロロンはチュチュチュっとなき、はねをパタパタさせました。
 レナは、それにあわせて、うたいだしました。レナは、うたがだいすきです。うたうだけで、ふわふわとこころがはずみ、おどりだしたくなるのです。
 レナのうたは、もりのきや、はなや、かぜやつちにしみわたり、うたにあわせて、きのえだもはなも、はっぱもおどりだしました。
 すると、やさしいかぜにのり、はっぱや、はなびらはまちへ、ゆらりゆらりとんでいきました。
 もりのかぜは、まちのかぜにあわせて、おどりつづけます。
「おや、なにか、きこえるぞ。あぁ、どうしたのかな。おどりたくなってきたぞ」
 だんちょうは、からだをむずむずさせ、ききみみをたてました。
 よくきくと、それはおんなのこの、こえのようです。そのこえをしりたくて、だんちょうはもりまでやってきました。
 レナは、もりといっしょになって、おどり、うたっていました。
「とてもうつくしいこえだ。きみ、ぼくたちのげきにでてくれないか」
「そんな、できないわ」
 レナは、げきなどでたこともやったこともありません。
「だいじょうぶ。きみならきっとできるよ。だって、こんなに、すばらしいこえをもっているじゃないか」
 だんちょうは、レナをげきじょうにつれていくと、けがをしたおんなのひとがまっていました。
「どうか、わたしのかわりに、げきにでてください」
 おんなのひとのなみだをみて、レナはでることをきめました。ですが、なかなかうまく
いきません。
「もう、あしたがほんばんだわ。やっぱり、できっこないわ」
 レナは、ふあんでたまりません。それに、げきでつかう、すてきなドレスも、くつもなかったのです。
「レナ、これをつかいなさい」
 おばあさんは、じぶんのむかしのドレスをなおして、うつくしいドレスをつくってくれました。
「これ、どうぞ」リコちゃんも、すてきなくつをかしてくれました。
「それとね。おまえのおかあさんのたいせつにしていた、かみかざりだよ。これをつければ、きっとあんしんしてうたえるよ」
 ちいさなはこのなかに、かみかざりが、かがやいていました。
「ありがとう。おばあさん、リコちゃん」
 ドレスとかみかざりをつけて、くつをはいてみると、いつものレナではない、うつくしいしょうじょになっていました。
「さぁ、じゅんびはいいかな」
「はい」
 きょくがながれだしました。
 レナは、とじていためをあけ、ステージにかけあがりました。
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