プライベート空間

文字数 876文字

大学2年生の僕には、高校3年生の頃から付き合っている彼女がいる。

大学受験後に告白し、晴れて付き合うことになった。しかし、僕は東京、彼女は大阪の大学に通っている。いわゆる、遠距離恋愛というやつだ。

東京と大阪なら、すぐに、簡単に会える。
そう思うかもしれない。
けれども、僕たちの地元は北海道。
アルバイトを掛け持ちし、両親からの仕送りにも助けられながら、お互い一人暮らしをしている。

もちろん、アルバイトをしているからと言って、両親に多額の学費を払ってもらっている分、学生の本分である学業も疎かにはしない。

ただ、昨年度は未知のウイルスの影響を受け、講義は全面的にオンラインに移行した。
その結果、課題が驚くほど増えた。

1つレポートを書き終えても、また新たなレポートを課される。
1つテストを終えても、次のテスト日程を告知される。

この繰り返しだった。

さらに、移動が制限されたことで、僕たちはますます会うことが難しくなってしまった。

そんな僕たちの物理的な距離を埋めてくれるのが、携帯だった。
以前から毎日、連絡は取っていたけれど、前代未聞の状況で不安やストレスを感じる日々を過ごす中、連絡の頻度は増えていった。

そこで、僕たちはあるルールを決めた。

【日付が変わる前までに、その日やるべきことをすべて終わらせる。そして、24時から30分間、ビデオ通話をする。】

このルールを決めるだけで、それまで憂鬱だったレポートの執筆やテスト勉強のモチベーションは劇的に向上した。億劫に感じていたお風呂も早めに済ませるようになった。



24時、僕のスマートフォンが音を立てる。

『もしもし?』

どうでもいい話でただ笑ったり、真剣な話をしたり、カップルらしく『好きだよ』なんて言い合いをしてみたり、、

画面の向こうで、コロコロ表情が変わる彼女が可愛くて仕方ない。



時刻は24時50分。

あぁ、30分なんてとっくに過ぎてしまっている。
でも、いいんだ。僕は今、大好きな彼女を独占できて世界で1番、幸せ者だから。

ここは、僕たちだけのプライベート空間だ。

今日もまた、愛おしい彼女の声に包まれながら、僕は眠りに落ちる。
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