第１話
文字数 2,004文字
おや、まだ日が昇って間もないのに、どうも。いらっしゃい。
今日は貴方が一人目です。さあ、もうすぐ朝がやってきますよ。
…え？ああ、僕はここでただ、こうして貴方みたいにここへ来た人とお話する者です。
名前はないのですが、そうですね…貴方が目覚めるまでの、ただの話し相手、そしてここの案内人です。宜しくお願いしますね。
ここは、貴方の世界が３秒止まった世界です。貴方の夢の時間が、今止まっているんです。
貴方の世界ではたった３秒ですが、ここに居る限り、時間は止まったまま。
ゆっくりお話できるので、安心してください。
さあ、貴方の見ていた夢の話でもしましょう。
今日はどうやら晴れそうです。起きたら綺麗な朝焼けが見られるでしょう。
そして、あなたが見た夢…桜が咲いていて、とても綺麗だ。
貴方は、夏に咲く桜をご存知ですか？…え？桜は春の花だよって？
そうですね、その通りなんですが、夏の桜は夜空に咲くんです、空に、ちゃんと咲くんです。
花びらがそこらじゅうに散らばって、キラキラ輝いて。
春の桜とは違いますが、匂いだってあるんです。
あおあおとした、とてもみずみずしい香りなんです。きっと、貴方も知っている香りのはずです。
夏の桜は散ることだってあります。雨の日には、その姿を消してしまう。
それでも桜はずっと咲いているんですよ、遥か彼方で。
秋や冬にだって、ちゃんと桜は咲きますよ。
夏の桜と同じだ。夜空に咲いていたり、ひらひらと舞い降りてきたり。
例えば落ち葉を踏みしめて歩く秋は、風にあおられて木の葉が舞って。
その景色はまるで、春の桜と同じに思えませんか？
そして凍えるような寒さですが、雪がちらちらと揺れながら落ちていく姿に何か、重なりませんか？
こうして具体的な名称を出してしまうと「桜」ではなくなってしまいますが。
それでも貴方がこうして夢で見ている桜は、姿をかえて、いつでも咲いているのです。
春の淡いピンク色の桜じゃなくても、ちゃんと存在しています。
見方を変えればいつだって、その景色は浮かぶはず。
あなたがそれを見て、綺麗だ、と思うまで、３秒。
これから見られる朝焼けや、夕日のグラデーションに、心を奪われるまで、約３秒。
季節で変わる色はとても切なく、愛おしい。心が揺さぶられますよね。
冬は長くても、どこか温かさを感じる、そう、僕は温かいと感じられることが、幸せな事のように思えます。
ふふ、夏に暖かいなんて、感じる事はないですもんね？
貴方はやはり、春がお好きですか？…ああ、そうなのですね。
春と秋がお好きなんですね。そう言思えませんか？
夏の未練がしつこく張り付き、入り口が見えてこない。
気づいたら、あんなにうるさかったセミのう方、結構多いですよね。
春はきっと、長い冬の目覚めの季節であるから。秋は暑い夏からの開放。そんな所でしょうか？
過ごしやすい季節だからこそ、自然に目を向ける余裕が生まれてくるのでしょうね。
いつでも心に余裕があれば、夏も冬も楽しいのですが。
そうだ、次は貴方が好きだといった秋について、お話しませんか？
秋の入り口って、とてもあやふやに鳴く声がきこえなくなり、いつの間にか隣に秋がいた、なんてこと、ありませんか？
ああ、わかって頂けて嬉しいです。こういう感性、僕は大事にしていたくて。
せっかく四季があるのですから、季節ごとに思ったことを記して行きたいです。
そう、こうやって「誰か」と四季折々の話をするのも、よいですね。
まつりごとだけが、季節の到来ではないと、僕は思っています。
例え、一人で過ごす日常にだって、季節は穏やかに微笑んでくれるのですから。
ずっとずっと、瞳に写る景色をスライドさせて
そんな風に一年を過ごせるのは、素敵だと思いませんか？
ここへ来る方は皆、僕をロマンチストだと言うのですが、貴方もやはりそう思いますか？
…ふふ、やっぱりですか。じゃあ僕はきっとそうなんですね。
誰かが忘れかけた季節、景色、音を、僕はもっと感じて生きて欲しいのです。
自然と云う大きな変化を、もっと感じて欲しいのです。
さあ、そろそろ目覚めますか？時間は止まっているので、まだまだ語りたいのですが。
どうやら次のお客さんがこちらに向かって来ているようなのです。
…ええ、そうですよ。僕は同じ話をここで何度もしています。
今、貴方に話した事だって、きっとまたお話します。
では、よかったらまた遊びに来てください。そして、起きたらカーテンを開けてみてください。
きっと、今日はひときわ美しい朝焼けが見られるはずです。
それを見た貴方の３秒後の心の中は、きっと満たされているでしょう。
さあ、今日もよい一日をお過ごしください。やるべき事があれば、それも頑張れるはずです。
ああ、そうだ。今夜は月も見られますよ。ぜひ何か願ってみては如何でしょう？
それではまた。…また、こうしてお話できる日を心待ちにしております。
いち、にい、さん。
さあ、時間は動き出しました。いってらっしゃい。
今日は貴方が一人目です。さあ、もうすぐ朝がやってきますよ。
…え？ああ、僕はここでただ、こうして貴方みたいにここへ来た人とお話する者です。
名前はないのですが、そうですね…貴方が目覚めるまでの、ただの話し相手、そしてここの案内人です。宜しくお願いしますね。
ここは、貴方の世界が３秒止まった世界です。貴方の夢の時間が、今止まっているんです。
貴方の世界ではたった３秒ですが、ここに居る限り、時間は止まったまま。
ゆっくりお話できるので、安心してください。
さあ、貴方の見ていた夢の話でもしましょう。
今日はどうやら晴れそうです。起きたら綺麗な朝焼けが見られるでしょう。
そして、あなたが見た夢…桜が咲いていて、とても綺麗だ。
貴方は、夏に咲く桜をご存知ですか？…え？桜は春の花だよって？
そうですね、その通りなんですが、夏の桜は夜空に咲くんです、空に、ちゃんと咲くんです。
花びらがそこらじゅうに散らばって、キラキラ輝いて。
春の桜とは違いますが、匂いだってあるんです。
あおあおとした、とてもみずみずしい香りなんです。きっと、貴方も知っている香りのはずです。
夏の桜は散ることだってあります。雨の日には、その姿を消してしまう。
それでも桜はずっと咲いているんですよ、遥か彼方で。
秋や冬にだって、ちゃんと桜は咲きますよ。
夏の桜と同じだ。夜空に咲いていたり、ひらひらと舞い降りてきたり。
例えば落ち葉を踏みしめて歩く秋は、風にあおられて木の葉が舞って。
その景色はまるで、春の桜と同じに思えませんか？
そして凍えるような寒さですが、雪がちらちらと揺れながら落ちていく姿に何か、重なりませんか？
こうして具体的な名称を出してしまうと「桜」ではなくなってしまいますが。
それでも貴方がこうして夢で見ている桜は、姿をかえて、いつでも咲いているのです。
春の淡いピンク色の桜じゃなくても、ちゃんと存在しています。
見方を変えればいつだって、その景色は浮かぶはず。
あなたがそれを見て、綺麗だ、と思うまで、３秒。
これから見られる朝焼けや、夕日のグラデーションに、心を奪われるまで、約３秒。
季節で変わる色はとても切なく、愛おしい。心が揺さぶられますよね。
冬は長くても、どこか温かさを感じる、そう、僕は温かいと感じられることが、幸せな事のように思えます。
ふふ、夏に暖かいなんて、感じる事はないですもんね？
貴方はやはり、春がお好きですか？…ああ、そうなのですね。
春と秋がお好きなんですね。そう言思えませんか？
夏の未練がしつこく張り付き、入り口が見えてこない。
気づいたら、あんなにうるさかったセミのう方、結構多いですよね。
春はきっと、長い冬の目覚めの季節であるから。秋は暑い夏からの開放。そんな所でしょうか？
過ごしやすい季節だからこそ、自然に目を向ける余裕が生まれてくるのでしょうね。
いつでも心に余裕があれば、夏も冬も楽しいのですが。
そうだ、次は貴方が好きだといった秋について、お話しませんか？
秋の入り口って、とてもあやふやに鳴く声がきこえなくなり、いつの間にか隣に秋がいた、なんてこと、ありませんか？
ああ、わかって頂けて嬉しいです。こういう感性、僕は大事にしていたくて。
せっかく四季があるのですから、季節ごとに思ったことを記して行きたいです。
そう、こうやって「誰か」と四季折々の話をするのも、よいですね。
まつりごとだけが、季節の到来ではないと、僕は思っています。
例え、一人で過ごす日常にだって、季節は穏やかに微笑んでくれるのですから。
ずっとずっと、瞳に写る景色をスライドさせて
そんな風に一年を過ごせるのは、素敵だと思いませんか？
ここへ来る方は皆、僕をロマンチストだと言うのですが、貴方もやはりそう思いますか？
…ふふ、やっぱりですか。じゃあ僕はきっとそうなんですね。
誰かが忘れかけた季節、景色、音を、僕はもっと感じて生きて欲しいのです。
自然と云う大きな変化を、もっと感じて欲しいのです。
さあ、そろそろ目覚めますか？時間は止まっているので、まだまだ語りたいのですが。
どうやら次のお客さんがこちらに向かって来ているようなのです。
…ええ、そうですよ。僕は同じ話をここで何度もしています。
今、貴方に話した事だって、きっとまたお話します。
では、よかったらまた遊びに来てください。そして、起きたらカーテンを開けてみてください。
きっと、今日はひときわ美しい朝焼けが見られるはずです。
それを見た貴方の３秒後の心の中は、きっと満たされているでしょう。
さあ、今日もよい一日をお過ごしください。やるべき事があれば、それも頑張れるはずです。
ああ、そうだ。今夜は月も見られますよ。ぜひ何か願ってみては如何でしょう？
それではまた。…また、こうしてお話できる日を心待ちにしております。
いち、にい、さん。
さあ、時間は動き出しました。いってらっしゃい。
