第1話

文字数 3,357文字

昭和40年

序章
 

雪と君が同時にふってきたよ
僕の中に
雪と私と同じ存在ですか
いや礼子さんそのものかな
雪は礼子さんの象徴だよ
白く雪のような美しさ
いつまでも、ふれていたい


武志さん、そのような悲しいことを
おっしゃらないでください
雪はすぐ消えてなくなります
そのはかなさがわかりますか
どれだけ降っても、消えてなくなります
今日はどうしたの
ごめんなさい

何を泣いているの

夢をみたのです
私が追いかけても追いかけても
武志さんが次第に離れて行って
私が追い付かないの
武志さんはどんどん離れていって
私は途中で転んでも、武志さんは気づいていながら
まるで、何事もなかったように
走り去って
どうしても、どうしても追いかけても
追いつけないの
まるで、私の元を去っていくように
それでも、武志さんのことを想い続けて

でも・・・・・・・・

どうしたの

いえ・・・
武志さん
ごめんなさい、暗い話をしてしまって

いや、悪いのは僕の方だよ
礼子さんに悲しい思いをさせてしまって
礼子さん泣かないで
大丈夫だよ僕が温めてあげるから
 


すべてはこの雪から君へ

Love Story

 



寒いからあのレストランで食事をしよう
そろそろいい時間だね

はい

ここは温かいね

そうですね

ごめんね
お金があまりないから
ハンバーグ定食でいいかな

武志さんが好きなものなら
私も食べたいです
武志さんの楽しそうに笑った顔を見られることが一番幸せです

礼子さん、ありがとう

このハンバーグ美味しいね

そうですね

このハンバーグ定食ね450円なんだ
安いよね

おいしいです

礼子さんはハンバーグはつくれるの
ごめん、失礼だったね

はい、他にもいくつかはつくれます

料理自慢なんだね
いえ、大したことはないです

今度ハンバーグ定食を食べたいな
本当につくれるか見てみたいし

どこで作りましょうか

やっぱり、礼子さんの家かな

そうですよね・・・・

どうしたの
急に元気がなくなって
何か悪いこと言ったかな

いえ

どうしたの、涙流して

辛いのです

どうして

いろいろありまして

そうなんだ、ごめんね

食べ終わったら寒いけど、外にでようか

外にでるのですか

そうだよ

寒いのではないですか

寒いけど、大丈夫

じゃあね、礼子さん
5メートル先で前を向いて立っていて

このあたりですか

もう少し奥の方かな

外で何をされるのですか

さあ、なんだろう秘密だよ

怖いですか

どうかな

いえ、だめです
こわいです

だいじょうぶだよ、僕を信じて

はい

じゃあね、何も考えず後ろをみて

何をされるのですか
こわいです

少し待っててね

やっぱり怖いです

大丈夫だよ

いくよ





キャ
 

冷たい、やめてください
 

冷たかった
 

はい、びっくりさせないでください
 

じゃあ武志さん、ほら
 

わあやめてくれ

フフフフ

やったな、こら

ほら


キャ
 

背中の中にいれたな
 

それじゃあ、じゃあこれはどうだ
 

わあ、そんなにだめです
 

あ、だめです
 

バタン
 

武志さん・・・・・
 

突然だったかな、ごめんね

・・・・・ 

礼子さんの事を想うと
いてもたってもいられないんだ
好きで好きでたまらないんだ
時としてそれがとても辛くなる

恥ずかしいです

礼子さん後ろをむいてみて
もう雪はなげないから、いいから信じて

はい

僕を信じてね

これを受け取ってもらえないかな
結婚してください

私じゃだめです、私は体が弱いし
女性として面白くないです
冗談も言えないのですよ

そういう礼子さんが好きなんだよ

今は自信がないことや、事情があります
近いうちに必ず受け取りますから
もう少し待っていただけませんか

ぼくもゆっくり待つからね
突然でごめんね

いえ、とてもうれしくて

寒いね

はい

さっきのレストランに入ろう

何か飲もうか
僕はコーヒー、礼子さんは

私はお水でいいです

どうして

喉が乾いていないですし
武志さんに無駄なお金を使わせたくないからです

礼子さん
テーブルにグラスがあるよね
一番大きいのが僕だよ
中くらいのグラスが礼子さん
小さいのは誰だかわかる

子供ですか

そうだよ
僕たちは、あのグラスになるんだ
小さいグラスは増やしていけばいいよ

はい
心のなかで受け止めます
近いうちに
お願いします






第1話 出会い

ここは涼しくて、落ち着くな

カナどこにいくの
だめよ、そっちには人がいるから

ああ、チワワだね、よしよし

ごめんなさい

迷い込んできたのかな

カナだめよ

だいじょうぶだよ
かわいいね
よしよし
君が飼い主

はい

僕がもらっていいかな

ごめんなさい、それはできません

そうだよね
冗談だよ
よかったら隣に座らない
涼しいよ風があたって
前に行くと、見晴らしがよくて
下の街並みがみえるんだ

そうなんですね
でも、恥ずかしいです

大丈夫、何もしないよ
それとも僕が変わった人にみえるのかな

いえ
そんなことはないです

それとも僕の隣に座りたくないのかい

いえ、違います

じゃあ、いっしょに座ろう

はい

涼しいよね

はい

あれ、カナ
カナがいない

大丈夫だよ
飼い主のところに帰ってくるから
僕と君をふたりきりに、させてくれたのかもね

いえ

君はおとなしいんだね

そうですか

うん、そうだね
もしかして、一人っ子かな

はい

僕も一人っ子なんだ
同じだね
僕は母子家庭で育って
父親はさ飲んだくれで
僕が中学校2年の時に死んでさ
母さんが一人で育ててくれたんだ
母さんには感謝しているよ
だいぶ苦労したと思う

私は幼い頃、父と母が仲が悪くて
父は厳格で、しつけが厳しかったです
ただ、父は私に甘くて、優しい面もありましたが
いちばん悲しかったのは
母からはあまり愛情を感じずに育ちました

さびしかったね

そうです
愛情が欲しくて
今は一人でもいいので
誰かから愛されたいです
さびしいです
寂しくてたまりません

私は
小泉礼子と申します

ああ、俺は山内武志
よろしくね

はい、こちらこそ、よろしくお願いします

ぼくは社会人だけど
礼子さんは

学生です

どこの大学

東京大学です

すごいね

いえ、大したことはないです

でも、すごいな

僕みたいな高卒の隣にすわってもいいのかな

とんでもないです
私は学歴ではないと思っています

そうだね、でも僕は高卒だから
そういうセリフはいえないんだよね
明るい話題に変えよう
そういえばカナちゃんかわいいね

はい

何歳

1歳です

そうなんだね
来たよ
かわいいね
あ、またあっちに行ったね
ちょっと待って、捕まえてくるね

はい

走っていくから早いな
見失った
ここに野草があるよ
色はわからないな
月明かりでほんのり照らしていて
この色はピンクかな
ほら、礼子さん
これプレゼント

いいのですか

もちろん

やはりピンクだったね

はい、ありがとうございます

うれしいです

お礼がほしいんだけど
いいかな

はい

何ですか

礼子さんが左に座っているよね
お礼だからね

はい

右肩を僕の左肩に当ててみて

いえ、恥ずかしいです

大丈夫

はい

僕が礼子さんの
右の首に

いえ、だめです、だめです

そして僕が

いえ
本当に恥ずかしいです

最後に左肩に僕の左肩を
礼子さんの肩にまわす

そうすると
恋人になった

いやかな
今は一人でもいいので
誰かから愛されたい 
そう言ったよね

はい

しばらくこうしてていい

はい・・

ほら、星がきれい
月が君を照らしている
僕は明日帰るよ

私も明日帰ります

じゃあ、そろそろ帰るね

はい、ありがとうございました

今日は僕の恋人かな

・・・・・・

そうだよね

はい・・

じゃあね
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