プロット

文字数 2,173文字

起:
 いたって平凡な中1女子、東矢(とうや)ナナミには兄がいる。文武両道眉目秀麗焼肉定食(ぶんぶりょうどう・びもくしゅうれい・やきにくていしょく)の完璧人間だ。
 ただ一つ、彼が異星人ということを除いては。
 ある日突然現れたナナミの『お兄ちゃん』こと東矢ヒロトは、不思議な力を山ほど持った異星人(エイリアン)。資源が枯渇した母星を救うため、『星の王子様』であるヒロトは地球を侵略しに訪れたのだという。
 完璧なはずの洗脳が何故かナナミだけには通じていないが、さして気にする様子もなく、へらへら笑って地球侵略計画を進めるヒロト。限りある学生生活を満喫したいがあまり、面倒ごとに首を突っ込み、騒動ばかり巻き起こすヒロトは、すっかり学校の有名人だ。最初はヒロトの存在を迷惑に思っていたナナミだったが、やがてヒロトと過ごすしっちゃかめちゃかな日々に居心地の良さを感じ始める。
承:
 元々学校で浮き気味だったナナミが、ヒロトの出現を機に少しづつクラスになじみはじめた頃、ナナミの街は異星人の襲来を受ける。巨大怪獣の形をとり、街を蹂躙する異星人を見て、ヒロトの仲間が訪れたことを悟り、今までヒロトと過ごした日々を後悔するナナミ。しかし、危機一髪のところでヒロトの異能力に助けられる。
 怪獣と同じ異星人であるはずのヒロトが、自分を守ってくれたことに困惑するナナミ。しかし、いっしょに助けられたクラスメイト達が一斉に疑問の声を上げる『ナナミ、その人だれ??』
 ヒロトの洗脳が周囲に通じなくなっていることに驚くナナミ。瓦礫の街を逃げまどいながら、二人は話をする。ヒロト曰く、怪獣の狙いは、ナナミの命だという。
『ちょっと待ってよ、意味が分からない、なんで、わざわざ、私のことなんか……』
『それは、ナナミ―――きみが異星人(エイリアン)だからだよ』
転:
 実は、ナナミとヒロトは本当に双子の兄妹だった。
 宇宙に数多いる生命体の中でも、ナナミ達の種族は、体内に高エネルギー鉱石を持ち、その力を元に様々な異能力を使用することで有名で、その体を巡って太古から星間戦争が繰り返されてきた。その中でもナナミの鉱石は、類を見ないほど高いエネルギーを有し、将来的に争いの火種になると危ぶまれいていた。
 二人が生まれた頃、度重なる侵略によって母星はほとんど滅びかけていた。未来を悲観した両親は、資源豊かと言われる辺境の星、地球に、生まれたばかりのナナミをワープさせる。身元不明の赤子として日本の児童養護施設に預けられたナナミは、物心つく前に東矢夫妻の養子になったのだった。
 母星で育てられたヒロトは、繰り返される戦争と飢えの中で、地球にいる妹のことを聞かされて育った。居場所を転々とし、敵の手から逃げ続ける人生で、地球で生きる妹の存在はヒロトの救いだった。
 数カ月前の侵攻で、ヒロトは種族唯一の生き残りとなった。残り少ないエネルギーで存在を消し、必死に姿を隠して生き延びたヒロトは、敵が地球方向に面舵を取るのを目にする。
 このままだと妹が狙われると直感したヒロト。力の全てを振り絞り、奇跡的に妹の場所を探り当て、七矢家に辿り着いたのだった。
 母星から離れたことで、ヒロトの異能力はどんどん薄まりつつあった。それでも、ナナミを守るため一人で怪獣に立ち向かおうとする。必死になってヒロトを止めるナナミ。
『なんでわかってもらえないかな、おれは別にいいんだよ、死ぬなら―――妹を守ってからって、それだけが希望だったんだ』
『だったらわたしと一緒に生きてよ!!』
 叫ぶナナミに呆気にとられるヒロト。
『わたしのお兄ちゃんだったら、ここからいなくならないでよ。明日も東矢ヒロトでいてよ。それが、私を守るってことじゃないの』
 猛るナナミの周囲に、風が集まり始める。ナナミの異能が目覚めたことに気づいたヒロト。立ち上がることもできないが、ナナミに向かって手を差し出す。
『なんか言うことない?お兄ちゃん』
『……すまんが、おれを守ってくれ、妹』
 ニッと笑ったナナミは怪獣に向かって駆けだす。ヒロトはその後姿をまぶしく見つめるのだった。
結:
 一か月後。
 怪獣はナナミのワンパンで宇宙の藻屑と消えた。ヒロトの尽力あって、怪獣騒動は奇跡的に死者なく終結する。瓦礫の残る街で、すっかり元通りの生活を送るナナミとヒロト。ヒロトの異能はほぼなくなってしまったが、東矢夫妻が奇跡的に善良なお陰で、『怪獣騒動で怪我を負い、記憶喪失になった少年ヒロト』として東矢家に居候しつづけている。
 宇宙は広すぎて基本治外法権だが、地球付近は比較的法整備が整っており、ナナミとヒロトは怪獣騒動をきっかけに『超絶滅危惧生命保護法』によって『S級保護対象生命体』に指定される。ひとまず訪れた安寧の日々に安堵の息を吐くナナミ。ヒロトは、二人の体に宿る鉱石について研究を進め、宇宙中のエネルギー問題を解決し、あわよくば地球で一番の大富豪になりたいという俗な野望を抱き相変わらずへらへらしている。
 そして、新しいヒロトの転校初日。ざわつくクラスで、ナナミとの関係を聞かれたヒロトは笑って答える。
『まあ、お兄ちゃん……みたいな感じかな?』
 また始まる波乱の日々の予感に顔を覆うナナミ。しかし、掌に隠された口元には小さな笑みが浮かんでいた。
 こうして、ある日突然現れた『お兄ちゃん』は実のところは異星人で、今も私の家から地球侵略をもくろんでいるワケですが。
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