星に願いを
文字数 3,184文字
不思議なインターネット・サイトを見つけた。
〝文明の星(The Star of Civilization)〟という題名があり、
黒地に白で、図形が描かれている。
六芒星 すなわち、〝ダビデの星〟や〝籠目 〟とも呼ばれる文様 が、
円で囲まれた図形だ。
新しいオカルトかSF系のゲームサイトかな?と思って見ていると、
「あなたは地球外文明が存在すると思いますか?
またそれは、なぜですか?」という質問が、画面に浮かんだ。
興味をひかれた私は、
「宇宙の規模や生命発生、知的生物進化の確率を掛け合わせた、
〝ドレイクの方程式〟からみて、そう思う」と答えた。
するとまた「〝フェルミ・パラドックス〟という言葉を知っていますか?
またそれは、なぜだと思いますか?」という質問。
私は再び、「観測技術が進んでも、
今まで知的種族の存在を示す証拠は見つかっていない。
文明の発展や存続を阻 む要因、
〝グレート・フィルター〟の存在も考えられるが、
個人的には、人類に対し異星種族の存在が隠されている
だけだと思いたい」と答えた。
するとさらに、「それはなぜですか?」と聞かれた。
私は「知的種族が人類だけという未来は厳しいし、つまらない。
異星人は敵対的で危険とか、
人類は原始的すぎて相手にされないというのも嫌だ。
人類を将来の同胞として考えつつ、相互の利益を考えて、
私達が一定の発展段階にまで達したら接触を図ろうとする
種族がいてくれるのが、一番望ましい」と答えた。
すると今度は、「あなたが今、一番知りたいことは何ですか?」
という質問。
私は「そうした知的種族の有無や状況、意図につき知りたい」と回答。
すると突然、画面が切り替わり、一人の美少女が映った。
夜景に佇 むゴスロリ衣装、長い黒髪、真っ赤な瞳。
知的な眼差 しをした彼女はこう言った。
「ご回答ありがとうございます、そして初めまして!
私がまさに、そんな種族の中のひとつの、代表人格です。
それでは窓の外をご覧ください」
いたずらサイトか?と思っていると、外で何やら叫び声が上がった。
私は窓を開けて、外を見た。
多くの星が輝く夜空を、いくつかの大きな流れ星のようなものが、
ゆっくり動いている。
頭上の空を、丸みを帯びた、銀色の光を放つ巨大な円盤が通り過ぎ、
街のまん中あたりの上空に静止した。
おいおいちょっと、この急展開は軽すぎないか!?
驚いた私は、再び画面を見た。
すると彼女は、私の動きを知るかのように、言葉を続けた。
「かつて銀河系を統一した〝先帝〟種族は、臣下の種族サタンに、
人類など発展途上種族の文明化を助けるよう命じました。
しかしその後、好戦的な側近軍事種族間の内戦が起きて、
〝先帝〟種族は滅び、帝国は崩壊の危機に陥ったのです。
そこで文官種族のサタンは、若い種族を守り、国家を再建するために、
〝先帝〟生存者達の指導や友好種族の支援を得て、新帝国を建てました」
「彼女は現在、技術・産業種族や良識的な軍事種族とも協力して、
平和の回復と国家再建に努めています。
内戦を受けて、帝国との交流条件も緩和され、
今回ご参加いただいた百万人規模の抽出調査 を経て、
人類の技術的・政治的な成熟度を確認できたことから、
接触時期の繰り上げが決定されました」
「皇帝種族からのご挨拶 を初め、詳細については、
公的な通信媒体を通じて発表される予定です。
これからも文明の順調な発展が続けば、
人類は将来民主化される予定の星間国家において、
必ずや名誉ある地位を占めることができるでしょう!
今後とも、新国家の政策によろしくご協力をお願いいたします」
「因 みに今回の調査にご参加くださった方は、ご希望により、
政策調査員 として登録いただくことも可能です。
自己紹介が遅れましたが、私はサタンの同盟種族バラムです。
これからも、よろしくね!」
彼女がウインクしてみせると、動画は終わった。
急いでバラムという名を検索すると、
「過去と現在、未来について正しく答える悪魔」とある。
そうした話法 の文化をもつ種族だとすれば、
昔の怪しい魔導書 にも、事実が含まれていたわけだ。
興奮した頭の中を、色々な考えが駆 け巡 った。
恒星間航行ができるぐらいだから、
AIネットに接続するくらい造作 もないだろうが、
異星種族が人類と全く同じ姿というのは考え難 いので、
画像は本当の姿ではないのだろう。
〝代表人格〟や〝彼女〟という代名詞からすると、
自分達自身も量子頭脳への人格転移 を達成しているかもしれない。
となれば当然、映像あるいは再転移 用身体の属性も、
相手方の好みに応じて、自由自在に最適化することができるはずだ。
それは生物学的な限界を越えて複雑加速化し、
さらには宇宙にまで広がる文明活動を自己制御し続けるためには、
必然的な流れといえるかもしれない。
あと、〝同盟種族〟という言葉を使ったところを見ると、
彼女は軍事種族という可能性もある。
一体どんな戦いを行い、戦況はどうなっているのだろう。
別に本物の神様や悪魔というわけではないが、
大昔の地球に来てそれらを演じることができ、
以後も発展を続けてきたような連中同士の戦争なのだ。
自ら意思あるAIと化しているとすれば、人心掌握 だけでなく、
いざとなれば殺戮 の技術もまた、私達のAIの比ではないだろう。
技術はもとより、技術を使った文明生活を健全に保つのに必要な、
政策の内容も高度で、説得力があるはずだ。
今の文明段階における、在来技術のもとでの利害調整政策であれ、
次の文明段階を開く、新技術を得るための研究開発政策であれ、
論争するのも手強 い相手となるだろう。
〝権力と正当性は車の両輪〟というのは政治学の初歩だそうだが、
いきなりどちらも凄腕 の師匠 達が現れ、
その道場に放り込まれたようなものだ。
しかし、そんな心配による吊 り橋 効果もあってか、
彼女の姿は実に美しく見えた。
おお神様……アニメオタクの私には、どストライクです!
実際の姿は知るのが恐い気もするが、それはそれで、
ギャップ萌えマニアにはご褒美 ……って、そうじゃなくて(笑)。
厄介 なことに関わったかなとも思ったが、
他にも関係者は百万いるし、願いも一応叶 ったわけだし、
いずれにしても全人類はもう、一蓮托生 だ。
将来的には平和が戻り、技術や産業、政策の面で相互協力できるなら、
確かに人類には、より明るい未来への可能性が広がったと思う。
彼女の未来予測が当たることを願いつつ、続報を探した。
……来た来た、〝新皇帝からのご挨拶 〟!
動画を見ると、何と茶色のおかっぱ頭をした、
とても可愛らしく、優しそうな女の子が話し始めた。
「親愛なる人類の皆様、私は新皇帝種族サタンの代表人格です。
美しい地球を再び訪れ、私の心は懐かしさでいっぱいです……」
まあ、私みたいなオタクは増えているからなあ(苦笑)。
いつもより明るい星空を見ながら、私は再度、心から願った。
どうか人類が、新たな〝新銀河秩序 〟のもとでも、
正しく努力し、それが報われ、幸せな未来が開けますように……。
〝文明の星(The Star of Civilization)〟という題名があり、
黒地に白で、図形が描かれている。
円で囲まれた図形だ。
新しいオカルトかSF系のゲームサイトかな?と思って見ていると、
「あなたは地球外文明が存在すると思いますか?
またそれは、なぜですか?」という質問が、画面に浮かんだ。
興味をひかれた私は、
「宇宙の規模や生命発生、知的生物進化の確率を掛け合わせた、
〝ドレイクの方程式〟からみて、そう思う」と答えた。
するとまた「〝フェルミ・パラドックス〟という言葉を知っていますか?
またそれは、なぜだと思いますか?」という質問。
私は再び、「観測技術が進んでも、
今まで知的種族の存在を示す証拠は見つかっていない。
文明の発展や存続を
〝グレート・フィルター〟の存在も考えられるが、
個人的には、人類に対し異星種族の存在が隠されている
だけだと思いたい」と答えた。
するとさらに、「それはなぜですか?」と聞かれた。
私は「知的種族が人類だけという未来は厳しいし、つまらない。
異星人は敵対的で危険とか、
人類は原始的すぎて相手にされないというのも嫌だ。
人類を将来の同胞として考えつつ、相互の利益を考えて、
私達が一定の発展段階にまで達したら接触を図ろうとする
種族がいてくれるのが、一番望ましい」と答えた。
すると今度は、「あなたが今、一番知りたいことは何ですか?」
という質問。
私は「そうした知的種族の有無や状況、意図につき知りたい」と回答。
すると突然、画面が切り替わり、一人の美少女が映った。
夜景に
知的な
「ご回答ありがとうございます、そして初めまして!
私がまさに、そんな種族の中のひとつの、代表人格です。
それでは窓の外をご覧ください」
いたずらサイトか?と思っていると、外で何やら叫び声が上がった。
私は窓を開けて、外を見た。
多くの星が輝く夜空を、いくつかの大きな流れ星のようなものが、
ゆっくり動いている。
頭上の空を、丸みを帯びた、銀色の光を放つ巨大な円盤が通り過ぎ、
街のまん中あたりの上空に静止した。
おいおいちょっと、この急展開は軽すぎないか!?
驚いた私は、再び画面を見た。
すると彼女は、私の動きを知るかのように、言葉を続けた。
「かつて銀河系を統一した〝先帝〟種族は、臣下の種族サタンに、
人類など発展途上種族の文明化を助けるよう命じました。
しかしその後、好戦的な側近軍事種族間の内戦が起きて、
〝先帝〟種族は滅び、帝国は崩壊の危機に陥ったのです。
そこで文官種族のサタンは、若い種族を守り、国家を再建するために、
〝先帝〟生存者達の指導や友好種族の支援を得て、新帝国を建てました」
「彼女は現在、技術・産業種族や良識的な軍事種族とも協力して、
平和の回復と国家再建に努めています。
内戦を受けて、帝国との交流条件も緩和され、
今回ご参加いただいた百万人規模の
人類の技術的・政治的な成熟度を確認できたことから、
接触時期の繰り上げが決定されました」
「皇帝種族からのご
公的な通信媒体を通じて発表される予定です。
これからも文明の順調な発展が続けば、
人類は将来民主化される予定の星間国家において、
必ずや名誉ある地位を占めることができるでしょう!
今後とも、新国家の政策によろしくご協力をお願いいたします」
「
政策
自己紹介が遅れましたが、私はサタンの同盟種族バラムです。
これからも、よろしくね!」
彼女がウインクしてみせると、動画は終わった。
急いでバラムという名を検索すると、
「過去と現在、未来について正しく答える悪魔」とある。
そうした
昔の怪しい
興奮した頭の中を、色々な考えが
恒星間航行ができるぐらいだから、
AIネットに接続するくらい
異星種族が人類と全く同じ姿というのは考え
画像は本当の姿ではないのだろう。
〝代表人格〟や〝彼女〟という代名詞からすると、
自分達自身も
となれば当然、映像あるいは
相手方の好みに応じて、自由自在に最適化することができるはずだ。
それは生物学的な限界を越えて複雑加速化し、
さらには宇宙にまで広がる文明活動を自己制御し続けるためには、
必然的な流れといえるかもしれない。
あと、〝同盟種族〟という言葉を使ったところを見ると、
彼女は軍事種族という可能性もある。
一体どんな戦いを行い、戦況はどうなっているのだろう。
別に本物の神様や悪魔というわけではないが、
大昔の地球に来てそれらを演じることができ、
以後も発展を続けてきたような連中同士の戦争なのだ。
自ら意思あるAIと化しているとすれば、
いざとなれば
技術はもとより、技術を使った文明生活を健全に保つのに必要な、
政策の内容も高度で、説得力があるはずだ。
今の文明段階における、在来技術のもとでの利害調整政策であれ、
次の文明段階を開く、新技術を得るための研究開発政策であれ、
論争するのも
〝権力と正当性は車の両輪〟というのは政治学の初歩だそうだが、
いきなりどちらも
その道場に放り込まれたようなものだ。
しかし、そんな心配による
彼女の姿は実に美しく見えた。
おお神様……アニメオタクの私には、どストライクです!
実際の姿は知るのが恐い気もするが、それはそれで、
ギャップ萌えマニアにはご
他にも関係者は百万いるし、願いも一応
いずれにしても全人類はもう、
将来的には平和が戻り、技術や産業、政策の面で相互協力できるなら、
確かに人類には、より明るい未来への可能性が広がったと思う。
彼女の未来予測が当たることを願いつつ、続報を探した。
……来た来た、〝新皇帝からのご
動画を見ると、何と茶色のおかっぱ頭をした、
とても可愛らしく、優しそうな女の子が話し始めた。
「親愛なる人類の皆様、私は新皇帝種族サタンの代表人格です。
美しい地球を再び訪れ、私の心は懐かしさでいっぱいです……」
まあ、私みたいなオタクは増えているからなあ(苦笑)。
いつもより明るい星空を見ながら、私は再度、心から願った。
どうか人類が、新たな〝
正しく努力し、それが報われ、幸せな未来が開けますように……。