第1話

文字数 758文字

エスカレーターに乗ると思うことがある。
エスカレーターでイチャイチャする人って、けっこう多くないかと。

階段状の上と下になったカップルが向かい合い、ギュッと抱き合ったりチュウしたりしている。
彼/彼女たちはエスカレーターが到着すると、今さっきまでのイチャラブっぷりを急にストップして、平然と歩き出す。
まるでとりつかれていた霊がヒューッと抜けてしまったかのように。

公衆の面前ではしたない――そんなことを言いたいのではない。
エレベーターや車の中でイチャつくなら、わかる。箱として仕切られていて、そこには内輪だけの空間が生じている。

だがエスカレーターは、後方の人から丸見えである。決して「恋は盲目」な人々を茶化す訳ではないが、エスカレーターに乗っている間だけベタベタできる感じ、それがよくわからない。
(べ、べつに私だってイチャイチャしたいなんて、全く、これっぽっちも思ってないんだからね!――これは私の中のツンデレちゃんの叫びか)
(公衆の面前で抱擁や・・・ま、まして、せ、接吻をするなど、はしたな過ぎます!――あるいは眼鏡の委員長が頬を赤らめているのか)

上りエスカレーターが多い気がする。エスカレーターでのイチャつきが見られるのは。
どうしてなのか考えていると、以下のような公式を発見してしまった。

<カップルによるイチャラブ発生の定義>
上る状況 × 自動移動 = イチャラブの発生

スキー場に行ったことは一度しかないのだが、これはスキーやスノボのリフトでも発生しているだろう。スキー場なんて、『ゲレンデがとけるほど恋したい』奴らの集まりだからね!

人々の生活はどんどん便利になっても、愛が足りない――そんな風に言われて久しい。
世の中にLOVEを増やしたいなら、数多の坂道にエスカレーターや類似する自動昇降装置をどんどん設置すればいい。
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