第1話

文字数 1,180文字

(起) 空を見上げることが大好きな少年の「アレン」。生家の井戸が異世界の空へ通じていたことか  ら、異国の森へ投げ出されてしまう。森に仕掛けられた人工網により、その一命を取り留める。松笠や紙吹雪、チョコレート、トカゲなど、現地の住民は不可解な天気に悩まされていた。人一倍臆病な性格ながらも、アレンはそんなおもちゃ箱をひっくり返したような世界で生きていくことを決意する。


(承) アレンの落ちた森は不思議な生物の生息地でもあった。尻尾がヘビになっているリス、角の生えたウサギのジャッカロープ、マンゴドラなどの不思議な生物や植物と触れ合っていくうちに、それらの存在が異常気象を前にして、対して特異な反応を示すことがると気が付くアレン。「ナマズが暴れると地震が起きる」「猫が顔を洗うと雨が降る」といった生物や自然現象から予測する「観天望気」と呼ばれる気象学の存在を思い出す。それが、今いる異世界でも通用することを知り、森の様子と異常気象の観察日記を付け始める。やがて「ベル」と呼ばれる森の近くに住む気象学者に命を救われたことを知り、彼女を師匠と慕うようになる。アレンはベルとの交流の中で、異常気象や観天望気の様々な知識を授けられる。その一つとして毒虫の異常気象についての事例を聞かされる。マンゴドラの叫びとの因果関係を突き止めるアレン。周辺の街一帯に一定期間だけ網を張ることで、被害を防ぐことに成功する。噂を聞きつけた国王の部下がアレンのもとを訪れる。それは異常気象にまつわる研究の打診だった。


(転) 程なくして、アレンは肩に一匹のヘビリスを乗せ、ベルを連れて国の中心である王都へ赴く。そこで国王に雇われた気象学班のメンバーと出会い、徐々に信用を集めていく。やがて組織のリーダーから「黒雨」と呼ばれる最悪の雨の兆候を聞かされる。兆候は掴めても、被害の場所についてなんの情報も得られない一行。占いや、古文書の言い伝えなどをあてにする国の人々——。そんな折、ヘビリスの脱皮の周期の異常に気付くアレン。彼は気象学班のメンバーと手分けをして、国中のヘビリスについて調査を開始する。その先頭に立つのはアレンだった。


(結) ヘビリスの脱皮の周期の異常が、黒雨の観天望気として機能することを突き止めるアレン。仲間との調査の結果、大まかな被害地域の位置を割り出す。隣国が攻めて来ると嘘の情報を流し、周辺の住民を避難させる大胆な作戦を決行する。その後、見事に黒雨から難を逃れたアレンやベル、その気象学班の仲間達。異常気象の兆候について、国中の自然現象や生物現象・天気にまつわる言い伝えなど、大規模な調査に乗り出す約束を王様から取り付ける。騒乱を経て、第二の故郷となった森へ戻るアレンとベル。自分が空から落ちたその日、「異常気象」の一部だったことを彼女から知らされ、彼の冒険は幕を閉じた。



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