第1話

文字数 1,589文字

 あるちいさなむらに、つばきというおんなのこが、くらしていました。
 つばきのゆめは、りっぱなまじょになること。
 なぜなら、つばきのおかあさんも、まじょだからです。
 だけど、そのことはみんなにひみつ。
 しっているのは、つばきのともだちの、すみれだけです。
 ある、はるのひのこと。
 はやくまじょになりたいつばきは、おかあさんにいいました。
「おかあさん。わたしももう、7さいよ。わたしに、まほうをおしえて」
 しかし、おかあさんは、くびをよこにふります。
「つばきには、まだはやいわ」
 つばきは、なっとくがいきません。
「それなら、じぶんでまほうのれんしゅうをしよう」と、つばきはおもいました。

 つばきは、ちょうどいいおおきさのえだをひろってきて、つえをつくりました。
 そして、おかあさんのまねをして、じゅもんをとなえます。
「チョコレートよ、うかびあがれ!」
 だけど、チョコレートは、ぴくりともうごきません。
「おかあさんは、いつもかんたんそうにやっているのに、どうしてできないんだろう」
 つばきは、おちこみました。
 すみれは、そんなつばきを、おうえんしてくれました。
「つばき、がんばって。つばきなら、きっとできるわ」
「ありがとう。すみれ」
 それからつばきは、まいにち、まほうのれんしゅうをしました。
 あめのひも、かぜのひも、さむいさむいゆきのひも。
 そうして、また、はるがちかづいてきました。

「さくらのはな、はやくさかないかなあ」
 ちいさなおとこのこが、まだつぼみのおおいさくらのきをみて、いいました。
 つばきはそれをきいて、いいことをおもいつきました。
「そうだ!さくらのはなをさかせて、おとこのこをびっくりさせよう」
 そしてつばきは、つえをもって、じゅもんをとなえました。
「さくらのはなよ、まんかいになれ!」
 しかし、さくらのはなは、さきません。
 それどころか、ひらきかけていたつぼみまで、ちってしまいました。
 それをみて、おとこのこは、「えーん、えーん」となきはじめます。
 つばきは、かなしくなりました。
「わたしは、おかあさんみたいなまじょに、なれないのかな」
 おちこむつばきをみて、おかあさんが、いいました。
「これからも、れんしゅうをつづければ、きっとすてきなまじょになれるわ。つばきが、ほんとうにだれかをたすけたいとおもったときに、ねむっているまほうのちからが、めをさますのよ」
 おかあさんにはげまされて、つばきは、まほうのれんしゅうをつづけました。
 うまくいかなくても、ぜったいに、あきらめることはありませんでした。

 あるひ、すみれとつばきがあるいていると、さくらのきのうえに、「にゃー、にゃー」とないている、ねこがいました。
 どうやらそのねこは、きのうえから、おりられなくなったようです。
「わたし、たすけにいってくるわ」
 すみれはそういって、きのうえに、のぼりました。
 ねこをかかえたすみれが、きからおりようとした、そのとき。
 すみれが、あしをふみはずして、きからおちてしまいました。
「すみれ!」
 ふたりをたすけたいと、つばきはつよくおもいました。
「すみれとねこさんを、たすけて!」
 つばきがさけぶと、じめんにおちていたさくらのはなびらたちが、うかびあがり、あつまって、そらとぶじゅうたんのようになりました。
 そして、すみれとねこは、そのじゅうたんにのって、ふわふわとおりていきました。
 すみれとねこは、つばきのまほうのおかげで、ひとつもけがをしなかったのです。
「ありがとう。つばき」
 すみれは、つばきにおれいをいいました。
 すみれたちをたすけたいとおもった、つばきのきもちが、まほうのちからにかわったのです。
 つばきはそれからも、こまったひとびとをたすけるために、まほうのれんしゅうをしました。
 つばきが、いちにんまえのまじょになるのは、もうすこしさきのおはなしです。
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