第3話
文字数 236文字
その日の授業が終わり、帰りの会の直前に生徒たちが急に大声で言った。
「田原先生、お誕生日おめでとうございます」
その時今日が自分の誕生日だということに初めて気づいた。
「ありがとう」と生徒それぞれの頭をなでて回った。
だから朝、妻が何か言いたそうにしていたのかと。母親の夢を見たのも、そのせいかもしれない。
家に帰ったら妻がささやかなお祝いをしてくれた。もう五十も過ぎて、誕生日もないと思うけれど、素直にうれしかった。
過去はどうあれ、今は本当に幸せだと感じた。
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