第四話 ~四大魔法~

文字数 3,279文字

 神発暦3512年 夏


 ぼくがウル爺との稽古を開始してしばらくたち、夕暮れ時になり、屋敷の中からメイドがやってきた。


「レオン様、夕食のお時間になりましたので、屋敷の中にお戻りください」

「わかったよ。すぐ戻る。
 それじゃぁウル爺今日はありがとう」

「えぇ、また次のお稽古の時にお会いしましょう。それと、マーシャ殿に迷惑をかけぬように」

「善処します」

「それでは、ウルフリック様正門までお送りいたします。」


 メイドはそういって、ウル爺を正門まで送っていった。







 ぼくが屋敷に戻るとすでに、両親と妹がすでに、テーブルを囲んでいた。


「お兄ちゃん、遅いよ」

「ダメでしょテレサ。ちゃんとお兄様とお呼びなさい」

「えー、だって」

「だってじゃありません。家の中でもきちんとした言葉遣いをすることに慣れてないと、公式の場で恥をかきますよ」

「はーい、ごめんなさい」

「はぁ、全くこの娘は」

「あまり、テレサをせめないでよ、お母様。ぼくもテレサくらいの頃は同じ感じだったでしょ。きちんと公私の切り替えはできるようになるよ」

「そうだぞ、アンナ。テレサはまだ子供なんだから。まだいいじゃないか」

「あなた、そんな甘い考えではテレサが立派な淑女に育ちません」


 そんな感じでぼくたち家族が団欒していると料理が運ばれて食事が始まった。


「レオよ、調子のほうはどうだ?」

「うん、今日はウル爺にすこしほめてもらえたよ」

「そうか、それなら戦神の加護が与えられているといいな。いくら剣術の才があろうとも加護が与えられなくては、強くなれないからな」

「はい、ぼくも戦神の加護が与えられていることを祈っています」

「魔術の方はどうなんだ?」

「毎日魔力を練る訓練はしていて、丁度今日の朝に、水晶を光らせることができたよ」


 この世界では、基本的に貴族だけでなく少し余裕のある家庭ならどこでも、簡易的な魔力測定の水晶を置いている。
 効果としては、ある一定基準(基本的には、一般人が一日の生活に使う魔力の三倍)の魔力が備わっているかを測る。


「そうか、ならそろそろパレスさんに連絡して戦闘魔法を習わせてもらおう。」

「はい、がんばります」

「お兄ちゃん、私も一緒に魔法習いたい」

「まだ、テレサには早いかな。まだ、光らせることができないだろう?」

「すぐ、できるようになるもん。だから連れてって」

「テレサ、無茶を言って自分の兄を困らせてはいけませんよ」

「はーい」

 ぼくの妹はよくわがままを言うが、否定されるとすぐに引く聞き分けのいい妹だが、なぜこんなに聞き分けがいいのだろう?ぼくが六歳の時の記憶では、叱られるまで駄々をこねていた記憶がある。

 きっとこの妹は将来素晴らしい女性になるのだろう。









 あくる日、ぼくは屋敷から出て道を歩いている。といっても別に抜け出してきたわけではない。昨日言っていたパレスというマルク領で一番の魔法使い所に行く途中である。

 魔法を習うときは、基本午前中からになるそうで、マーシャの授業は魔法を習うときは免除される。とはいっても、週に二度程度しか習いに行けないそうなので、まだまだ、マーシャからは解放されない。

 ちなみに、マルク領一の魔法使いのパレスさんは、神聖魔法の使い手らしい。なので、医療所を開いたり教会のお手伝いをしているらしい。当然お弟子さんたちもいるので、ぼくが魔法を習えるわけだ。







「やぁ、君がマルク男爵のところのお子さんかな?」

「はい、レオン・マルクと申します。本日はよろしくお願いします」

「領下の子たちと違って、礼儀正しいね。そんなにかしこまらなくていいよ」

「わかりました」

「それじゃあ、まずは魔法についてはある程度知ってると思っていいのかな?」

「はい、基本的な知識と、生活に使う魔法は少しだけできます」

「そうかい、とりあえず知識に抜けがないか、おさらいから始めようか」







 この世界の魔法は大きく四つの分類がされている。魂魄、戦闘、神聖、特殊の四つでこれらをまとめて四大魔法と呼ぶ。


 魂魄魔法は、主に魂と名につく通り制約が必要な魔法で、隷属、召喚、精霊、契約の四種に細かく分けられる。

 隷属は名の通り、生き物の行動を束縛するの魔法で、主に犯罪者や魔獣の拘束、奴隷にも使われる。

 召喚魔法は、どこか別の場所にいる者や生き物を自分のいる場所に移動させる魔法で、忘れたら困るものに術式をかけたり、隷属魔法や契約魔法を行使した生き物を呼ぶときに使われる。

 精霊魔法は、この世界にいる意思を持った魔力生命体である精霊から魔力を借りて行使する魔法で、基本的には、自分の使いたい属性の精霊を探し出して盟約を交わさないといけない。

 契約魔法は、何らかの条件を互いに決めて行う魔法で、国家間の決め事に用いられる。これを破ると魔法の強度によってことなるが、罰をくらう。

 ちなみに、この魔法の強度は主に、口頭級、信頼級、伝心級と分けられ階級が上がると、同じ魔法でも格段に効力がます。


 二つ目に、戦闘魔法は付与、放出、守護の三つに分けられる。

 付与魔法は、生き物の身体能力や物質の性能を向上させる魔法で、ぼくの家系であるマルク家のお家芸である。

 放出魔法は、魔力をさまざまな物質に変化させてそれを維持した状態で放つ魔法で、人によりそれぞれ得意な物質がある。

 守護魔法は、盾を作ったり、体の周りに魔力の膜をまとわせて、衝撃を軽減したり、跳ね返したりする体を守るための魔法。

 これらの魔法の強度は、単体級、分隊級、軍団級、国軍級、国家級、大陸級、世界級と分類され、強度の感覚としては、単体級の威力の魔法を何人分同時に行使できるかで決められている。

 例えば国軍級なら単体級の魔法を同時に万から数十万もの人間に影響を与えることができる規模で、これを個人に対して行使すればその効果は計り知れないだろう。


 三つ目に、神聖魔法は回復、神託の二つに分けられる。

 回復魔法は、生き物のけがや欠損を元に戻すことのできる魔法で、強力なものになれば、胴体を切断されても元通りになるという。

 神託魔法は、神からの神託を聞くことができる魔法で、強力であればあるほど、より鮮明に神の声を聴くことができる。

 これらの魔法の強度は自然級、願望級、奇跡級に分けられ、回復魔法において奇跡級は死者の蘇生を可能とする大魔法も含まれる。


 最後に、四つ目は、特殊魔法で構成、分解、変質、操作の四つに分けられる。

 構成魔法は、別名錬金魔法と呼ばれ、分解魔法と組み合わせることで、採掘場から掘り出された鉱石を分解再構築するときに用いられ、特定の物質だけを合成することや、目的の形に構築することができる。

 分解魔法は、様々なものを部分ごとに分解することができる。

 変質魔法は、別名変身魔法と呼ばれ、獣人種の得意とする魔法で、その多くが秘伝とされていて、大きな獣や、神獣と呼ばれる生き物に変身できるものもあるという。

 操作魔法は、ものを動かしたりするときに使え、強いものになると人を人形のように操る魔法もあるらしい。

 魔法の強度は物理級、事象級、幻想級に分類され、物理級以降の事象級は上等学院、幻想級は国に許可を得た研究所でのみ教えることや、研究することが許される危険な魔法になってくる。







「そうだね、大方あっているよ。特に、特殊魔法はその性質上、暴走を起こすととても危険なものとして、禁忌に指定された魔法が最も多い分類だ。今後教わることがあったら、しっかりと注意することわかったかい?」

「はい、わかりました。パレス先生」

「それじゃあ、教えるのは戦闘魔法だったね。まずは自分に合った杖を選ぼうか」
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