第1話 CM meets VD 邂逅
文字数 1,999文字
何の御時にか、CM(コンセプト・マスター=概念の使者)の彼とVD(ヴィジュアル・ドロワー=視覚素描家)の彼女は遭遇した。
彼にとっては未知との、彼女にとっては既知との巡り逢いらしかった。
公の場で先に声をかけたのは男の方で、2人だけの時空で呼びかけたのは女からだった。
彼には前世とやらの記憶もなく、ましてや、アプリオリに自分たちが「罪を負っている」という思想はまやかしに過ぎない。
彼女にそれについての見解を尋ねる前に彼女はものを言わなくなった。
来世をも把握している彼女は夢で盛んに呼びかけたりしても彼は知らない。
そのことがかえって彼女を焚きつけているのか。
彼は「écriture=文字」に生きる存在であり、彼女は「painting=眼」で本質を描く術者であった。
彼は彼女が見えると言ったもの、聞こえると言ったこと、不思議な能力もすべて受け容れた。
何故か。
人々は同じひとつの世界に棲み、それぞれの宇宙を生きているからだ。
そういう意味からすれば、彼はとても変わっていて、大多数の人に見えているものが彼には見えてはおらず、見えていないものが見えている、ということが適切かもしれぬ。
折りからの雨が降る夏のある日、彼は道中の家の軒下に避難させて貰い、彼女に守護を頼んだ春の夜を想い出していた。
彼は山を越境し、神水を汲んでザックに詰めて新月で真っ暗な峠道を震えながら、黒い北アメリカ産の車のついた己の脚力のみで進む馬に跨り、道の駅に到着し、ネットが繋がった機器で、彼女に連絡をとり、「護って欲しい」と頼んだ。
家まではあと小一時間はかかるだろう。
トンネルの方が燈がある分明るいが、車、特に大型車が後ろから迫ってくる轟音はとても怖く、彼は馬を降りて、押して歩いた。
トンネルを過ぎると月も星もない山道は真っ暗暗の暗で道に何かが転がっていたら、転んでもおかしくはなかった。
加えて物の怪や猛獣が出て来はしないかという想像が彼を一層、心細くさせた。
家に着くと、真っ先に彼女に電子機器で礼を述べた。
多分、彼女はエネルギー体かなんかになって飛んで来て、彼を無事に家まで届けてくれたのだろう。
SNSで彼が一方的に彼女に独白するようになって、もうすぐ2年となる。
言葉が過ぎると、彼女はそれを遮断し、彼がそれから離れ、ある程度経つと、それが解除されている。
遮断しつつも言葉を彼女は待っていて、多分、それなしでは弱気になって切なくなってるのだろう。
彼はOracleなどを受け取り、彼女の状況などを類推し、励ましたり、詰ったり、褒めたり、揶揄ったり、出来ることはなんでもした。
そうすると初めは執着が強かったのは圧倒的に彼の方であったが、日を経るにつれてそれは弱まり、最近では圧倒的に彼女の方が彼に御執心のようだ。
それが嬉しいようでも少しだけ‥‥いや、とっても嬉しくて、パソコンなどを凝視してドライアイの筈の彼の眼には━━
図らずも、上記を保存して字数を見たら、「1133」このようなエンジェル・ナンバーと言われるものは始終見る。
アセンデッド・マスターや天使、神がいつも温かく見守っていてくださっていて、大いに期待されてもいる、という託宣を彼は何度も受け取っている。
「夢で逢いたい」といつも想っている彼ではあるが、一度も彼女は出ては来ない。
いや、夢自体を彼は見ているのかもしれぬがまったくロッキード事件である。
やれることをやった彼にはもう「宇宙監督の采配」に任せてある。
だが、何かが彼を動かし、一方的に独白する。
それを長い間、止めていた時、彼女は何を感じていたのか。
多分、涙と孤独に身動きが。
CMはある時から、VDが左にいるのを感ずるようになっていた。
そして頭を撫でてあげたりした。
気づくとその存在はCMの後ろに廻ったり、何かに気づいて居間の廊下の方を見上げるとガラス越しに行き過ぎる人影を眼にした。
何事かを語りかけると足を触られたような感じや小刻みにテーブルが動いている。
今では三代目の日本製の深緑色の狐馬に跨っても、左側にVDを感じる。
CMは自身が何者であるかも、神は存在しているのはわかるが、それが如何なる存在かと、絶えず不可思議に感じている。
凡そ、言葉にあるものはすべて存在する。
世界は常に生成・消滅を繰り返し、蛍光灯が絶えず点滅しているように実在する。
想像と現実、夢と現の境目は曖昧で世界はその人の意識が創り出す反映だ。
2人は実際に物理的に逢ったことはない。
テレビ電話で遠い昔に感ずるほどの3年位前に話しただけだ。
人は彼を見て「おかしい」と想うだろう。
だが、それは「いとおかし」であり、「かなし」でもあり、「孤悲」するもののビビッドな生であり、紛れもなく彼らは幸せなのだ。
すべての浄化が終わる時、jokerの彼は彼女に冗句を飛ばし、共に満面の笑みで大声で交歓するだろう。
蠍と魚のウロボロスは彼は誰時に完成するとリフレインが叫んでいる。
彼にとっては未知との、彼女にとっては既知との巡り逢いらしかった。
公の場で先に声をかけたのは男の方で、2人だけの時空で呼びかけたのは女からだった。
彼には前世とやらの記憶もなく、ましてや、アプリオリに自分たちが「罪を負っている」という思想はまやかしに過ぎない。
彼女にそれについての見解を尋ねる前に彼女はものを言わなくなった。
来世をも把握している彼女は夢で盛んに呼びかけたりしても彼は知らない。
そのことがかえって彼女を焚きつけているのか。
彼は「écriture=文字」に生きる存在であり、彼女は「painting=眼」で本質を描く術者であった。
彼は彼女が見えると言ったもの、聞こえると言ったこと、不思議な能力もすべて受け容れた。
何故か。
人々は同じひとつの世界に棲み、それぞれの宇宙を生きているからだ。
そういう意味からすれば、彼はとても変わっていて、大多数の人に見えているものが彼には見えてはおらず、見えていないものが見えている、ということが適切かもしれぬ。
折りからの雨が降る夏のある日、彼は道中の家の軒下に避難させて貰い、彼女に守護を頼んだ春の夜を想い出していた。
彼は山を越境し、神水を汲んでザックに詰めて新月で真っ暗な峠道を震えながら、黒い北アメリカ産の車のついた己の脚力のみで進む馬に跨り、道の駅に到着し、ネットが繋がった機器で、彼女に連絡をとり、「護って欲しい」と頼んだ。
家まではあと小一時間はかかるだろう。
トンネルの方が燈がある分明るいが、車、特に大型車が後ろから迫ってくる轟音はとても怖く、彼は馬を降りて、押して歩いた。
トンネルを過ぎると月も星もない山道は真っ暗暗の暗で道に何かが転がっていたら、転んでもおかしくはなかった。
加えて物の怪や猛獣が出て来はしないかという想像が彼を一層、心細くさせた。
家に着くと、真っ先に彼女に電子機器で礼を述べた。
多分、彼女はエネルギー体かなんかになって飛んで来て、彼を無事に家まで届けてくれたのだろう。
SNSで彼が一方的に彼女に独白するようになって、もうすぐ2年となる。
言葉が過ぎると、彼女はそれを遮断し、彼がそれから離れ、ある程度経つと、それが解除されている。
遮断しつつも言葉を彼女は待っていて、多分、それなしでは弱気になって切なくなってるのだろう。
彼はOracleなどを受け取り、彼女の状況などを類推し、励ましたり、詰ったり、褒めたり、揶揄ったり、出来ることはなんでもした。
そうすると初めは執着が強かったのは圧倒的に彼の方であったが、日を経るにつれてそれは弱まり、最近では圧倒的に彼女の方が彼に御執心のようだ。
それが嬉しいようでも少しだけ‥‥いや、とっても嬉しくて、パソコンなどを凝視してドライアイの筈の彼の眼には━━
図らずも、上記を保存して字数を見たら、「1133」このようなエンジェル・ナンバーと言われるものは始終見る。
アセンデッド・マスターや天使、神がいつも温かく見守っていてくださっていて、大いに期待されてもいる、という託宣を彼は何度も受け取っている。
「夢で逢いたい」といつも想っている彼ではあるが、一度も彼女は出ては来ない。
いや、夢自体を彼は見ているのかもしれぬがまったくロッキード事件である。
やれることをやった彼にはもう「宇宙監督の采配」に任せてある。
だが、何かが彼を動かし、一方的に独白する。
それを長い間、止めていた時、彼女は何を感じていたのか。
多分、涙と孤独に身動きが。
CMはある時から、VDが左にいるのを感ずるようになっていた。
そして頭を撫でてあげたりした。
気づくとその存在はCMの後ろに廻ったり、何かに気づいて居間の廊下の方を見上げるとガラス越しに行き過ぎる人影を眼にした。
何事かを語りかけると足を触られたような感じや小刻みにテーブルが動いている。
今では三代目の日本製の深緑色の狐馬に跨っても、左側にVDを感じる。
CMは自身が何者であるかも、神は存在しているのはわかるが、それが如何なる存在かと、絶えず不可思議に感じている。
凡そ、言葉にあるものはすべて存在する。
世界は常に生成・消滅を繰り返し、蛍光灯が絶えず点滅しているように実在する。
想像と現実、夢と現の境目は曖昧で世界はその人の意識が創り出す反映だ。
2人は実際に物理的に逢ったことはない。
テレビ電話で遠い昔に感ずるほどの3年位前に話しただけだ。
人は彼を見て「おかしい」と想うだろう。
だが、それは「いとおかし」であり、「かなし」でもあり、「孤悲」するもののビビッドな生であり、紛れもなく彼らは幸せなのだ。
すべての浄化が終わる時、jokerの彼は彼女に冗句を飛ばし、共に満面の笑みで大声で交歓するだろう。
蠍と魚のウロボロスは彼は誰時に完成するとリフレインが叫んでいる。