文字数 491文字

写真の中の君は、少しはにかんだように微笑んでいる。
君は 一緒に撮ろうよとよく言っていたのに、僕は ふたりの写真なんかいつでも撮れるんだからと言って、君ばかり撮っていたね。
あんなに沢山撮った写真も、今はこの一枚だけだ。
あのとき、僕がポケットに入れていた この一枚きり…
あのとき、もし僕が一緒にいたら 君の時間は止まらずに済んだのだろうか…

もしも子どもがいたら…なんて考えたこともある。
子どもと一緒なら、能面のような表情で何も考えずにただ生きていたあの時間もなかったのかもしれない。
でも、ずっとひとりで生きてきたからこそ、君を忘れずにいられたようにも思う…
今も、ふと振り向けば君がそこにいて 微笑みながら僕の名前を呼んでくれるような気がする。
もう お祖父ちゃんと孫ほど歳が離れてしまったけれど、君はあのころと同じように僕を呼んでくれるだろうか?

すっかり時間がかかってしまったけれど、やっと君のところへ行けそうだ。
遅くなった分、話すことがたくさんあるんだ。
いっぱいお喋りして、いっぱい笑い合おう。
君がすぐに僕だって分かるように、君が選んでくれた あのころの眼鏡をかけていくよ。

ありがとう…
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