大命中大連発……昨日まで、他人(ひと)の事かと 思いしが……

文字数 686文字

「あの……何で、例の伝染病で世の中がエラい事になってる時に、遅くまで飲み歩いてたんですか?」
 医師の口調は、あくまで冷静だった。
 「やれやれ」と言った感じの冷たい表情ではあったが。
「い……いや、どうしても必要な事だったので……」
 検査結果を告げられた患者は、取り乱していたが、今の御時世、金持ちも貧乏人も、閣僚も失業者も、等しく例の伝染病に感染する危険が有る以上、普通に考えて、この結果は予想して然るべきだっただろう。
 もっとも、誰しも「人間はいつかは死ぬ」と判っていても、無意識の内に、その「人間」から「自分」を除外して考えてしまうのが「人間の脳の仕様」かも知れないが。
「全く、何を考えてるんですか? 感染してます。すぐに入院して下さい。それも隔離入院です」
「え……で……でも……」
「あと、ここ2週間の間に、半径3m以内で1時間以上接触した人を全てリストアップして下さい」
「あ……ちょっと待って下さい……。秘書に電話していいですか? あ……私だ……。()()()()()()()()()()()()()調()()()()()。そして、私と会議や会食をした人間をリストアップ……あ? 公的記録……ああ、信用出来ないが、そっちも一応頼む」

 かくして、その国の閣僚・与党幹部・各省庁のトップクラス・経済界の大物・大手マスコミ各社の経営陣の内……全員では無いにせよ、国の政治・経済に大きな影響が出そうな数の人々は、仲良く隔離入院する羽目になった。
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