第四話 満月――ワームムーン

文字数 1,028文字

 円香さんが運転をしながら、話をしてくれた。なかなか優花が帰って来ないので心配したこと。優花から連絡を受けて動物病院へ電話したこと。動物病院へ向かおうとしたら、私の家の家政婦の田中さんから心配の電話が来たこと。いろいろと話した結果、今日は円香さんの家に泊まることになったこと。私の母親にも連絡して了承をもらったこと。

「円香さん、ありがとう。心配かけてごめんなさい。」

「ううん、いいの。気にしないで。
 それより驚いたよ。翠月(みつき)ちゃんが、あんなに……。あんなに、真剣に、あの猫『飼いたい!』って。
 やっぱり飼いたいの?」
円香さんは、自己主張する私の姿に驚いたようだ。

「はい、飼いたいです。初めてなんです。こんな気持ちになったの。」
私は素直な気持ちを二人に伝えた。

「あたしも、正直びっくりした。
 翠月(みつき)が、『あれしたい!これしたい!』っていうの、聞いたことなかったから……。
 ねぇ、お母さん。翠月(みつき)が猫飼えるように、翠月(みつき)のお母さんに、言ってあげてよ。ね!」

 そんな話をしているうちに、車は円香さんの家に着いた。

 温かいカレーとコロッケ、野菜スープ……。円香さんのさりげない気遣い。優花のいつも以上に明るくて元気な声……。和むはずのこの家で一人、私は笑顔を作りながら、上の空だった。

 外を見ると、とてもきれいな満月の夜だった。
 三月の満月のことを「ワームムーン」という。暖かくなり、虫たちも活動を始める、そんな季節。春は、もうすぐだ。

 優花のジャージに身を包み、私は布団をかぶった。よほど疲れていたのだろう。隣では優花が、既にいびきをかいて寝ている。
 眠れない夜……。
 私は、今日の出来事を思い返していた。タロットに導かれるように猫を見つけたこと。それが「過去~現在」。

(そうだ! 未来のカード!)

――「聖杯の3(正位置)」(未来)


「聖杯の3」。このカードの一般的な意味は「祝福、喜び、仲間」。

リーディングを始める――。
 楽しそうな三人。祝杯を高々と上げている。足元にはたくさんの果物や野菜。
 白色、黄色、赤色、それぞれ違う色の服を着ている。
 それそれ個性が違うのだろう。
 白色は「純粋」、黄色は「祝福」、赤色は「意思」を表すそうだ。
 無垢な私は白色、明るい優花は黄色かな?
 赤い服の人は、手のあげ方が違う……。
 最初は二人で、後からそこに加わった?
 そして、三人目は……。

(きっと、あの猫のことだ!)

 私は確信した。そして安心したのか、いつの間にか、眠りに落ちていた。
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登場人物紹介

翠月《みつき》です。

幼い頃から、変わっている子でした。

今はタロットが大好きです。

翠月の親友、優花《ゆうか》です!

楽しいことが大好き!

猫の○○です。


優花の母、円香《まどか》です。

家政婦の田中です。

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