第1話
文字数 2,020文字
俺は動画投稿者だ。
そこそこのチャンネル登録者もいる。
心霊スポットを訪れては、動画を編集し投稿している。
最近伸び悩みもあり、続けるか悩むとこではある。
動画内で必ず言っていることがある。
「それから皆さん、もし心霊スポット行ったあとは、どこか店に立ち寄ってくださいね!
そうすれば霊がついてきていても、家までついてくることはないですからね!」
俺のバイト先はS市の有名心霊スポットの近くだ。売上が上がったと店長から特別手当を貰った。その程度の影響力ぐらいはある、俺は動画投稿者だ。
実際、撮影の後はどこか店に入る。
別に霊がどうのという訳ではない。
単に相方と打ち合わせをするためだ。
…とはいえ、店員さんの
「おふたり様ですね」
その一言にいつも安堵する。
休みの日に撮影に行った。
特に何も無く、いつものように編集でどうにかしようと思う。
その場所は何故かそこで撮影しても、動画投稿されないと有名な場所だった。
「この前のあれ投稿してから
お前のバイト先、客多くなったよな」
「まあ、近くに心霊スポットあって、
店あそこしかないからな」
「お前がいつも言ってる、『心霊スポット行ったらどこかお店に寄ってください』ってやつ、結構みんなやってるみたいだよ」
「俺のおかげだな。店長から金一封貰っちゃったよ」
「おお、すげぇな!」
「今日は奢ってやるよ」
「やった!それよりさ、今日の撮影のどうする?」
「完全にハズレだよ。単にあまりにも何も無さすぎて投稿してないんだよ、あれ」
「せっかくちょっと遠出したのにな」
「編集でなんか黒っぽいのそれらしく入れとくか」
「そうだな。あー腹減ったな。打ち合わせしがてらあの店よろうぜ。もちろんおごりで」
「ああ、あれ?いや…見間違いか…」
「どうした?」
「いや…なんでもない」
あったのは小さな古いカフェ。
蔦がすごくて店の名前すら見えない。
「いらっしゃいませ
3名様ですね」
「は?みりゃ分かん…」
俺は相方を止めた
「ああ、3人で」
テーブルについてから口を開いた
「…実はさっき運転中
バックミラーみたら女が乗ってるように
見えたんだ、一瞬…」
「え、それって…」
「そんな訳ないだろうけど、連れてきちまったのかもしれない。さっさとコーヒー飲んだら出よう」
「やっぱりあそこって何かあるのか?」
「どうだろう…聞いてみるか…」
「おまたせ致しました。」
「ありがとう。あの…この辺で…いや、やっぱりいいです…」
「ご旅行ですか?この辺何も無くて、いつも同じ人ばかりだから珍しくて」
「まあ、行ったことないような、いつもと違うとこ行ってみようかって…」
「素敵ですね!私もたまには出かけてみようかな。いつも同じ人ばかりでみんな暇してるんですよ、変わり映えなくて。もっと人が増えればいいんですけど…あ、すみません!べらべらと。どうぞごゆっくり」
ごゆっくりと言われたが、少しでも早くこの場を離れたくて、普段は砂糖もミルクもたっぷり入れるのにブラックのまま飲み干した。味なんて分からなかった…。
「おい、これ」
一気にコーヒーを飲み干し、急いで車に戻ると相方が手を広げた。
「ばーちゃんがよくお清めとか言ってたからさ、こういう撮影の時は実は持ってたんだ」
塩を手にいっぱい出して持っていた。
車の周りと自分たちにふりかけ
直ぐに出発した。
しばらく行くと民家が増えてきて、やっと喋る気になったのか、沈黙に耐えきれなくなったのか、相方が口を開いた。
「これで大丈夫かな…」
「大丈夫だろ
バックミラーも…うつってない」
「良かった…
俺やっぱりこういうのもうやめるわ
こえーもん」
「そろそろ潮時かなとも思ってたしな。
似たようなやつ結構出てきてるし、再生回数もチャンネル登録者数も増えてないし」
「他の奴らもここでこうやって決めてたりしてな!だからやめて投稿してなかったりして」
「そうならとんだいわくつきの場所だな」
「あ、そこのファミレス寄っていいか?
トイレ行きたかったのに
さっきんとこじゃ行けなかったからな」
明るいファミレスはホッとする。
駐車する時、ミラーを見るのがちょっと怖かったが今度は大丈夫だった。
…そういえば、行く時あんなところにカフェなんてあったか?あんな民家もない山の中にカフェなんて行く時に気づくはずだ。
「いらっしゃいませ
あ、申し訳ございません
ご予約でないとちょっと…」
「は?座れるだろ
窓際あいてんじゃん」
「ええ、でも2席だけですので
この人数の団体様はご予約でないと無理です」
「団体…?」
相方と俺はもう何も言えなかった…。
『私もたまには出かけてみようかな。みんな暇してるんですよ、変わり映えなくて。もっと人が増えればいいんですけど…』
ファミレスの窓にうつる俺の後ろに、あのカフェの店員の姿があった…。
今度の動画には付け加えよう
「近くのお店には置いていかれた霊がいっぱいいるので、ついてきても自己責任で」
もっとも、俺がこのまま無事に帰れたらの話だ…。みんな動画は投稿しなかったんじゃない。できなかったんだ、きっと…。
そこそこのチャンネル登録者もいる。
心霊スポットを訪れては、動画を編集し投稿している。
最近伸び悩みもあり、続けるか悩むとこではある。
動画内で必ず言っていることがある。
「それから皆さん、もし心霊スポット行ったあとは、どこか店に立ち寄ってくださいね!
そうすれば霊がついてきていても、家までついてくることはないですからね!」
俺のバイト先はS市の有名心霊スポットの近くだ。売上が上がったと店長から特別手当を貰った。その程度の影響力ぐらいはある、俺は動画投稿者だ。
実際、撮影の後はどこか店に入る。
別に霊がどうのという訳ではない。
単に相方と打ち合わせをするためだ。
…とはいえ、店員さんの
「おふたり様ですね」
その一言にいつも安堵する。
休みの日に撮影に行った。
特に何も無く、いつものように編集でどうにかしようと思う。
その場所は何故かそこで撮影しても、動画投稿されないと有名な場所だった。
「この前のあれ投稿してから
お前のバイト先、客多くなったよな」
「まあ、近くに心霊スポットあって、
店あそこしかないからな」
「お前がいつも言ってる、『心霊スポット行ったらどこかお店に寄ってください』ってやつ、結構みんなやってるみたいだよ」
「俺のおかげだな。店長から金一封貰っちゃったよ」
「おお、すげぇな!」
「今日は奢ってやるよ」
「やった!それよりさ、今日の撮影のどうする?」
「完全にハズレだよ。単にあまりにも何も無さすぎて投稿してないんだよ、あれ」
「せっかくちょっと遠出したのにな」
「編集でなんか黒っぽいのそれらしく入れとくか」
「そうだな。あー腹減ったな。打ち合わせしがてらあの店よろうぜ。もちろんおごりで」
「ああ、あれ?いや…見間違いか…」
「どうした?」
「いや…なんでもない」
あったのは小さな古いカフェ。
蔦がすごくて店の名前すら見えない。
「いらっしゃいませ
3名様ですね」
「は?みりゃ分かん…」
俺は相方を止めた
「ああ、3人で」
テーブルについてから口を開いた
「…実はさっき運転中
バックミラーみたら女が乗ってるように
見えたんだ、一瞬…」
「え、それって…」
「そんな訳ないだろうけど、連れてきちまったのかもしれない。さっさとコーヒー飲んだら出よう」
「やっぱりあそこって何かあるのか?」
「どうだろう…聞いてみるか…」
「おまたせ致しました。」
「ありがとう。あの…この辺で…いや、やっぱりいいです…」
「ご旅行ですか?この辺何も無くて、いつも同じ人ばかりだから珍しくて」
「まあ、行ったことないような、いつもと違うとこ行ってみようかって…」
「素敵ですね!私もたまには出かけてみようかな。いつも同じ人ばかりでみんな暇してるんですよ、変わり映えなくて。もっと人が増えればいいんですけど…あ、すみません!べらべらと。どうぞごゆっくり」
ごゆっくりと言われたが、少しでも早くこの場を離れたくて、普段は砂糖もミルクもたっぷり入れるのにブラックのまま飲み干した。味なんて分からなかった…。
「おい、これ」
一気にコーヒーを飲み干し、急いで車に戻ると相方が手を広げた。
「ばーちゃんがよくお清めとか言ってたからさ、こういう撮影の時は実は持ってたんだ」
塩を手にいっぱい出して持っていた。
車の周りと自分たちにふりかけ
直ぐに出発した。
しばらく行くと民家が増えてきて、やっと喋る気になったのか、沈黙に耐えきれなくなったのか、相方が口を開いた。
「これで大丈夫かな…」
「大丈夫だろ
バックミラーも…うつってない」
「良かった…
俺やっぱりこういうのもうやめるわ
こえーもん」
「そろそろ潮時かなとも思ってたしな。
似たようなやつ結構出てきてるし、再生回数もチャンネル登録者数も増えてないし」
「他の奴らもここでこうやって決めてたりしてな!だからやめて投稿してなかったりして」
「そうならとんだいわくつきの場所だな」
「あ、そこのファミレス寄っていいか?
トイレ行きたかったのに
さっきんとこじゃ行けなかったからな」
明るいファミレスはホッとする。
駐車する時、ミラーを見るのがちょっと怖かったが今度は大丈夫だった。
…そういえば、行く時あんなところにカフェなんてあったか?あんな民家もない山の中にカフェなんて行く時に気づくはずだ。
「いらっしゃいませ
あ、申し訳ございません
ご予約でないとちょっと…」
「は?座れるだろ
窓際あいてんじゃん」
「ええ、でも2席だけですので
この人数の団体様はご予約でないと無理です」
「団体…?」
相方と俺はもう何も言えなかった…。
『私もたまには出かけてみようかな。みんな暇してるんですよ、変わり映えなくて。もっと人が増えればいいんですけど…』
ファミレスの窓にうつる俺の後ろに、あのカフェの店員の姿があった…。
今度の動画には付け加えよう
「近くのお店には置いていかれた霊がいっぱいいるので、ついてきても自己責任で」
もっとも、俺がこのまま無事に帰れたらの話だ…。みんな動画は投稿しなかったんじゃない。できなかったんだ、きっと…。