文字数 560文字

 私の仕事は毎日工場へ行き自転車をこいで電気を作ることだ。
 この国では三十五歳になると皆この仕事に就く。
 あまりに過酷なので四十歳になると定年を迎えられるが、一度でもノルマを破るともっときつい仕事へ飛ばされるという噂だ。

 私の同僚は何人も消えていった、同僚が消えるのは悲しいがそういう日は決まって配給が豪華になるのでうれしい。

 ただ配給が豪華になるといっても肉が増えるだけなのだが、たまに脂がのりすぎて食べられない肉や筋張った肉が来ることがある。


 同僚のエフ氏がいなくなった時の話をしよう。その日の配給もすこし脂がのりすぎていた。

 彼は十八の時に家を出て一人で生計を立てていたそうだ、子供の時に満足に食べさせてもらえなかったせいで給料の大半を食事に使っていたようで三十五になったころには一人で靴下を履けないくらい太っていた。

 一日目彼はなんとかノルマを達成した。
 二日目彼はノルマを達成できずに就業時間後も一人で自転車を漕いでいた。
 三日目彼はもう来なかった。

 聡明な読者の方はもうお分かりだろう、ノルマが達成できないと食肉になるのである。

 たまに筋張った肉が来るのでもしかしたら四十になるとと殺されるのかもしれない。
 それでも私は毎日工場へ行くのである、妻子を養うために……。
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