何も変わらない今日と君のいない明日

文字数 799文字

何も変わらない今日と君のいない明日
「もうすぐ、2ヶ月だね…。」
「そうだね…。」

 ここは病院だ…。
 今日は由香のお見舞いだ。

「ねえ退院したらどこ行こっか。」
「そうだなぁ…。啓太くんと制服でディズニー行きたい!」
「そっかそっか…。退院したら一緒に行こうね…。」
「うん!」

 由香は病気だ…。
 いつ死んでもおかしくないらしく、ここまで生きていられる時点で既に奇跡であるらしい。

 だからもしかすると退院まで出来て完全に治っちゃうぐらいの奇跡も起こっちゃうんじゃないかとまでも思っている。

 しかし現実はそんなにも甘くなかった。

 *数日後*

 由衣の体調が悪くなったという話を聞き、病院に駆けつけた。

「由衣…?大丈夫か…?」
「…うん。今はちょっとだけね…。」
「そっか…。退院したらディズニー行くんだろ。早く元気になれよ。」
「…ねえ。私がもしもう今日までしか生きられないとしたら私に何したい…?」
「そりゃもう由衣の好きなことなんでもするさ…。」
「そっか…。」

 由衣はなぜか悲しそうな目をした。

「由衣はどうなんだ?俺に何して欲しいの?」
「私はね…。ハグして欲しい。」
「え…。そんなんでいいの?」
「そんなんなんて言わないでよね。啓太くんのハグは特別だよ。」
「でも、もっと特別なことして欲しいって思わないのか?」
「うん…。だって特別なことされるとほんとに死んじゃうって実感しちゃうもん…。」

 そっか…。ごめんね。

「それにね、啓太くんにとっては何も変わらない明日がやってくるんだよ…。啓太くんにまで実感されちゃうと申し訳ないしね…。」
「そっか。そっか。そうだよね。」
「私も何も変わらない明日迎えたかったなぁ…。」

 由香はそういうと大粒の涙を流す。

 そんな由香を全力で抱きしめる。

 いつもの別れのルーティンだけど、いつもより強く…。
 特別なことされると実感しちゃうって言っていたけどもどうしても…。

 翌日、由香は亡くなった…。
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