第4話
文字数 412文字
迂回に迂回を重ねて、二人はようやく目的地の病院に辿り着く。そこはピカピカに光った大きな病院だった。ターミナルには大量の車が列になって止まっている。
「こんなに大きな病院なのに建物の中はすごく静かなとこなんだ」少女は少年の手を握ったまま、病院のエントランスへと歩いて行く。「よかったら中に遊びにきてよ。わたしの部屋すっごく広いんだよ」
そう言って、少女は優しく少年の手を引く。しかし、少年の足は立ち止まったままでそこから動かなかった。
「どうしたの……?」
少女は少年の顔を心配そうに覗き込む。少年の手は小さく震えていた。
「……逃げなくちゃ」
少年は少女の細い腕を握り返し、走り出そうとする。
甲高いブレーキの音が少年の後ろから聞こえたのはその時だった。
気づいた時には、大きな車がガードレールを突き破り、少年の眼前に迫っている。
少年は走馬灯をみなかった。代わりに少年を捉えたのは、さっき感じた身体が痺れるような既視感だった。
「こんなに大きな病院なのに建物の中はすごく静かなとこなんだ」少女は少年の手を握ったまま、病院のエントランスへと歩いて行く。「よかったら中に遊びにきてよ。わたしの部屋すっごく広いんだよ」
そう言って、少女は優しく少年の手を引く。しかし、少年の足は立ち止まったままでそこから動かなかった。
「どうしたの……?」
少女は少年の顔を心配そうに覗き込む。少年の手は小さく震えていた。
「……逃げなくちゃ」
少年は少女の細い腕を握り返し、走り出そうとする。
甲高いブレーキの音が少年の後ろから聞こえたのはその時だった。
気づいた時には、大きな車がガードレールを突き破り、少年の眼前に迫っている。
少年は走馬灯をみなかった。代わりに少年を捉えたのは、さっき感じた身体が痺れるような既視感だった。